NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ラバー RUBBER」(35点/モンスター)

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■■■「ラバー RUBBER」■■■
(35点/モンスター)

 ある日、廃棄されていた古タイヤが唐突に自我に目覚めて人間を襲い始めるという怪事件が発生。

 古タイヤは超能力を駆使して人間を次々と殺害していき、犯人の正体を知った警察はなんとかして古タイヤの凶行を食い止めようとするが…



 唐突に自我に目覚めた古タイヤが次々と人間を襲うという、変り種のモンスターパニック映画。

 『自我に目覚めた殺人タイヤ』という設定からしても十分に訳が分からない映画なのですが、その要素をとっぱらったとしても全くもって訳の分からなさすぎる映画です。

 お話の冒頭で、登場人物の一人(恐らく監督の代弁者)が、この作品は『この世界の重要な事』や『人生』についての『理由が無い事』へのオマージュとして作られていると明言しており、『意味の無い事』を『意味の無いように描く』事に終始している作品なので訳が分からなくて当然な訳ですが…

 いやはや、ソレにしてもホントに訳が分からない映画でした。

 お話の作りとして、『殺人タイヤの動向』を描くフィクションのパート『その動向を遠くから見守る観客達』というメタフィクション的な構成が取られているのですが、序盤はこの構成が全く意味の無い要素なのですが、ストーリー中盤のとある事件をきっかけにこの『メタフィクション』と『フィクション』の境界が崩れるような展開になっていくのは、なかなか面白いですね。

 終盤の展開の『意図して作られたグテグテっぷり』も、なかなかシニカルな捻りが利いていて良い感じです。

 ただ、映画そのもののアイデアとしては悪くない部分は多いのですが、肝心のストーリーの要となる『フィクションの要素』の部分が、恐ろしく退屈でツマんないのは辛いところ。

 殺人タイヤにキャラクターとしての魅力が感じられず、犠牲者の殺害の仕方も『念力で犠牲者の頭を吹き飛ばす』という言葉だけ聞くと派手そうなんですが、絵面的には地味であんまり面白味の無い方法。

 せっかく『殺人タイヤ』という面白そうなシチュエーションを用意してるんだから、無駄に轢殺(れきさつ)しまくるとか、ワッカの中に人間の頭を入れて絞殺するとか、もっとシチュエーションに凝ったアホな殺害方法を見せて欲しかった。

 また『無意味さ』を惹き立てるためにか、カルトムービー的なシュールさを狙った演出が随所になされているのですが、この演出がちょっとワザとらしすぎて鼻に付いてしまうのも難点かなぁ?
 『殺人タイヤ』ってシチュエーションだけで十分にシュールなんだから、過剰にシュールな演出を入れる必要は無かったと思います。

 ラストのアンチハリウッド的な演出も、言いたいことは分かるんだけどちょっと余計だったかも…


 総評としましては、イデアそのものは悪くないんだけどソレが活かされた面白い作品になっているかと『ちょっと微妙な作品』としか言いようが無いような映画ですね。

 やや『捻(ひね)くれた感じの映画』が好きな人であれば、そこそこ楽しめるんじゃないかと思いますが、少なくとも普通にエンターテイメントやホラー映画を楽しみたい人にはちょっとオススメしかねる内容です。

 まあ話のネタとして観ておくとか、『ちょっと変り種のシュールな作品』が観てみたいという人には割と良い映画ではないかと思いますので、こういうカルト映画的なノリが好きであればチェックしておいても良いんではないかと…

 個人的には『殺人タイヤがもうちょっと魅力的に描かれてればなぁ…』と思う部分が多く、ちょっと肩透かしを食らわされたような気分になった一本でしたよ。