■■■「クライモリ デッド・ビギニング」■■■
(60点/スラッシャー)
1974年のアメリカ。
ウェストバージニア州の森の奥にあるグレンビル療養所という精神病院に監禁されていたカニバリズム(人肉食)嗜好のある異常者の一族が、医師たちを殺害して病院から逃走する。
それからおよそ30年後の2003年。
とある大学生の一団が、ウェストバージニアの森にスキーに訪れるが、森の中で道に迷って吹雪に巻き込まれてしまう。
森の奥で偶然にも精神病院跡の廃墟を発見した彼らは、一時避難のために建物へと侵入するが、翌朝に仲間の一人が行方不明になっている事に気付き…
派手なゴア描写で人気のホラーシリーズである「クライモリ」の4作目に当たる、スラッシャーホラー映画。
タイトルに『ビギニング』と付いているとおりに、最近流行りの『シリーズの起点となる過去を描く』という、いわゆる「クライモリZERO」みたいな感じのお話ですね。
と言っても、そもそも本作は過去を描く程の内容のあるようなシリーズでも無いですし、やってる事は2作目や前作と何も変わりませんけどね。
一応『人食い一族の秘密』といった感じの前振りはあるのですが、秘密も何も確か2か3で『近親婚を繰り返す畸形の一族が汚染された工業排水の影響で…』みたいな設定が無かったでしたっけ?
本作では『先天性の無痛症を持った特異体質』という後付け設定っぽいのが語られた程度で、特にコレというような秘密が明かされる展開や過去作をリスペクトしたようなお話もありませんので、逆に『シリーズを観てない人にも分かりやすい内容』とも言えるかも?
ストーリーの中身の方は、ぶっちゃけ有って無いも同然なレベルで『馬鹿な学生たちがドラッグとエロに明け暮れてるうちに殺人鬼に殺されていく』という、ホントにそれだけのお話ですね。
この手のスラッシャーホラーのシリーズものは、シリーズを重ねる度にどんどん『過剰に過激なだけ』の展開になりがちですが、本作もまさにそういった感じ…
まあ本作は逆に1作目とかが地味すぎたきらいはあったので、コレぐらい派手な展開の方が作品のテイストには合ってると思います。
作品のテンポは割と良くて残虐描写もバリエーションが豊富なので退屈するような暇も無くて、スラッシャーホラー映画としては十分に及第点のレベルには達して居ると言えるでしょう。
ただ残虐シーンの見せ方の問題なのか、結構エグいシーンがある割には全体的に『薄味で記憶に残らない印象』があるのは、ちょっと残念なところです。
また殺害される大学生たちの個性が薄くて、殺されても特に同情も出来ないし心が痛む訳でも無いという作りなのも、ちょっとアッサリ風味に拍車をかけてる感じで惜しいかなぁ?
(逆に気楽に楽しめて良いとも言えますが…)
犠牲者側にも、もう少し分かりやすい『主役級』のキャラクターを立てておいても良かった気はします。
ラストもちょっとアッサリしすぎで拍子抜けな感じなので、もう一捻りあっても良かったかも?
あと主人公達が、ストーリーの中盤で殺人鬼たちに『圧倒的優位』な状況に立っておきながらアッサリ逆襲されちゃうのは、『シリーズの過去に当たる作品』という性質上どうしようも無い訳ですが、あまりの無能っぷりにちょっとイラっとしちゃうかも?(笑)
総評としましては、やや物足りない部分はあるものの全体的には『普通に楽しめるレベルのスラッシャーホラー映画』といった感じですかね?
物凄く絶賛できるような要素も無いですが取り立てて大きな不満を感じるような部分も無いので、「13日の金曜日」みたいな『とにかく殺人鬼が暴れまくるスラッシャーホラー』が好きな人が観る分には、十分に満足できる内容だと思います。
特に強く推すほどの作品ではありませんが、この手のジャンルが好きで新作を求めているのであれば、とりあえずチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。