■■■「カミングアウト・オブ・ザ・デッド」■■■
(30点/モンスター)
2003年の9月25日。
アメリカのシアトル郊外の孤島のポート・ギャンブルという小さな町。
ゲイのカップルであるランスとトムは、シアトルに住むトムの『母親に自分たちが付き合っている事』を告白(カミングアウト)して、交際を認めてもらえるように話をするために町を訪れる。
しかし母親との会食中に、唐突に母親がゾンビ化して2人に襲いかかってくるという異常事態が発生。
何者かがばらまいたゾンビウィルスによって町中が汚染されて、住民が次々とゾンビ化しているという事をTVのニュースで知った彼らは、なんとかしてこの島から脱出しようとするが…
テロによってゾンビウィルスのばらまかれた島に訪れたゲイのカップルが脱出するためにサバイバルを繰り広げるという、モンスターホラー映画。
最近流行りのコメディホラータイプのゾンビ映画なのですが、タイトルの『カミングアウトって何だよ、主人公が実はゾンビでしたというのを告白したりするのか?』と思いきや、主人公達がゲイのカップルで親にゲイである事を告白する旅行の途中でゾンビ騒動に巻き込まれるという感じの設定でした。
まあ、確かに今までに無かったタイプの作品ではありますね…
ノリ的には『ブラックジョークの利いたコメディ映画』という感じのお話で、ゲイのカミングアウトに来た先で母親がゾンビになって襲ってきたり、逃げ込んだ先の教会で終末論者の神父に捕まって洗脳装置にかけられそうになったりと、かなりのブラックな感じの展開。
ただこのノリが、何と言うか全体的に『微妙な印象』なのが困り物。
私の個人的な感覚かもしれませんが、パロディの方向性が全体的に不快感を感じさせるような展開で笑える要素が殆ど無いのですよ。
主人公達を洗脳しようとするキリスト教信者に付いても『こんな非常事態にそんな事をやってる場合じゃないだろ!』って感想しか抱けませんし、本編の途中でテロが『イスラム原理主義者のしかけたもの』という事が判明してイラク人のハーフのヒロイン(主人公達のカップルとは別に登場する)がキチ●イの愛国主義者に拷問されたりするのですが、この展開もただただ不愉快でちっとも笑えない。
方向性としては「サウスパーク」みたいな感じで、『非常事態にこんな事に血眼になってる頭のおかしな人たち』というノリで、<宗教や差別主義者の腹黒さをパロディとして描きたかったのでしょうけど、どうにもネタが滑りがちで面白くないのですよね…
まあ、ブラックユーモアの許容範囲の広い人ならば十分に楽しめる内容なのかもしれませんが、自分はちょっとこのノリには付いていけませんでした。
あと、かなり低予算な作品なので特撮とかに関してもメチャメチャしょぼくて、B級というよりはD級ぐらいのレベルなので「ショーン・オブ・ザ・デッド」とか「ゾンビ・ランド」なんかと比べるべくも無いですし、マトモなゾンビ映画としても方面では期待できるような作品じゃ無いですしね…
総評としましては、ユーモアに関しても普通にゾンビ映画として観たとしても『純粋に微妙としか言いようが無い』ような作品でしたよ。
ブラックユーモア系の作品が大好きな人ならばそれなりに楽しめるかもしれませんが、トレイ・パーカー(サウス・パーク)やモンティパイソンは好きな自分でもコレはイマイチだったなぁ。
ネタとして微妙でもゾンビ映画として面白ければ、もうちょっと何とかなってたと思うんですけどね…
とまれ、他に類のない『ゲイのカップルを題材としたゾンビ映画』としては貴重な作品ですので、気になる人はネタとしてチェックして置いても良い一本ではあるかもしれません。