■■■「ハンター」■■■
(60点/サスペンス)
ベテランのハンターであるマーティンは、軍事系の企業であるレッドリーフ社から、既に絶滅したと言われるタスマニアタイガーがごく僅かに生存している事が確認されたため、その遺伝子情報を得るために『血液と体毛と内臓の一部を生体サンプルとして取ってきてほしい』という極秘の依頼を受ける。
彼は地元の環境保護家の世話になりながら単身でタスマニア島の高地へと赴くが、探索中に何者かの妨害を受ける。
最初は、単なる自然保護団体に反対する地元の過激派の仕業だと考えていた彼だったが、何者かに殺されたと思しき先任者の遺体を発見した事から、今回の依頼にうさん臭いものを感じるようになり…
幻の生物である『タスマニアタイガー』を追う事となった1人のハンターが巻き込まれる運命を描いた、ウィレム・デフォー主演のヒューマンドラマ風味のサスペンス映画。
予告とか観た感じとか『いかにもサスペンス映画』って感じにジャンル分けされている作品なのですが、実際の中身の方は『人間ドラマ』を中心とした『雰囲気映画』って感じの作品ですね。
お話の流れとしては、孤独なハンターである主人公が地元の住人と触れ合ったり思いがけない事実を目撃したりするうちに、仕事の依頼主に疑問を持つようになり徐々に心境を変化させていく…といった感じのお話で、サスペンス的な要素はあまり強くなくてヒューマンドラマが中心といった感じの構成。
実際にストーリーがサスペンスっぽくなるのはラストの30分程度で、それまでは主人公が広大な自然の中でタスマニアタイガーを追跡したりするシーンが淡々と描かれつつ、合間に地元住民たちとの触れ合い的な部分が描かれるといった感じ…
広大で美しいタスマニア島の自然の中を粛々(しゅくしゅく)と探索するシーンが多くて、その映像の美しさやアクマで淡々とて『空気感』を感じさせるような風景の見せ方などは、サスペンスというよりも『雰囲気映画』として良い味を出している印象で、どちらかというとそちらの要素の方が強く感じられる内容ですね。
人間ドラマとしても登場人物のキャラクター描写も非常に丁寧で、派手さは殆ど無いものの終盤の展開なんかは非常に印象的。
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、ラストの展開は主人公の哀しみや感情やらが『タスマニアタイガー』の姿に重ねられて、色んなものが伝わってくる感じがなかなかに良かったです。
ただ、人間ドラマは空気感を感じさせるような映像の雰囲気やらは非常に良い感じなのですが、サスペンスとしては物足りなさを感じる部分があるのも事実かな?
サスペンスと言ってもそこまで意外な展開がある訳でも無いですし、緊張感もあまり無くて終始まったりムードという感じですし、派手な要素も殆ど無いですからね。
基本的にサスペンス要素が推しの映画じゃないので問題ないと言えば問題ないのですが、いかにも『濃密なサスペンス』という感じの予告やパッケージの煽り文句があったので、ちょっと肩透かしを食らわされた気分ではあったかなぁ…
総評としましては、雰囲気映画風味のヒューマンドラマとして観るならば、雰囲気やストーリーも良くて『なかなか良く出来た作品』ではあると思います。
逆にサスペンスとして観た場合は、非常に『物足りなさの残る微妙な印象の作品』という感じになりそうなので、あまりそちらの要素を期待してると肩透かしを食らうかも?
悪くない出来の映画なのですが強く推すほどの部分にも乏しい印象なので、『タスマニアタイガー』とか『タスマニア島の大自然を探索する』という要素に興味があって、ちょっと内容が気になっているのであればチェックしておいても損は無い作品ではないかと思いますよ。