NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「チルド」(35点/サスペンス)

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■■■「チルド」■■■
(35点/サスペンス)

 修行中の作家で、日銭を稼ぐために職を探すサムは、ニューヨークの個人商店でアルバイトを始める事となる。

 店のオーナーで元医師のムニョスという老博士の面接を受ける事になった彼だが、冷凍室のように異常なまでに寒い部屋で暮らし、年齢の割に若々しい外見を保つ博士に不審なものを感じるが、勤務中に糖尿病の発作で倒れたところを博士に救われた事から懇意にするようになっていく。

 しかし、刑事から近所で起こった娼婦失踪事件の話を聞かされたサムは、博士が何らかの形で事件に関わっているのではないかと疑いを抱くようになり…



 作家志望の男性が異様に寒い部屋で暮らす老博士で出会った事から奇妙な事件に巻き込まれていくという、オカルトサスペンス映画。

 H・P・ラヴクラフトの短編小説である「冷気」をベースとしたお話だそうですが、ラヴクラフト原作で医者が主役という辺りで、ホラーファンならだいだいどういう系列の話か見当が付くかもしれませんが、いわゆる死体蘇生人タイプのお話ですね。

 自分は確かこの作品の原作を読んだ事があった気がするものの、確かこんなにバイオレンスなスラッシャーホラーみたいな内容じゃ無かった気がするのですが、元々の話が物凄く地味な内容なので映画に向けてかなり改変している感じですね。

 老博士が人間をさらってきて地下室で怪しい実験をしていたりと、どこの「死霊のしたたり」だよ…って感じの内容で、ラヴクラフトの原作をベースにする必要が無い』ようなお話だったりするので、ラヴクラフト的なゴシックホラー調のノリを期待して観るにはちょっと辛い内容です。
 (まあ「死霊のしたたり」ほどハチャメチャじゃないですけど…)

 ストーリーに関してはサスペンス的な要素を持たせてお話を膨らませようとしたのでしょうが、登場人物が多くて人間関係も非常に複雑に描かれいるので、むしろホラーよりもサスペンスとしては割と普通に楽しめるような感じ。

 メインの怪しい老博士に加えて、ヒロインに付きまとうストーカー紛いの刑事とか娼婦を誘拐されて復讐しようとするギャングとか、オカルトホラーにしては色んな思惑を持った登場人物の絡みが多いです。
 更に加えて『博士の過去のエピソード』なんかもちょっと描かれたりするので、ストーリー的には割とボリュームが感じられてそこまで退屈はしない印象。
 原作を知ってたら、『よくあの原作からここまで話を膨らませたなぁ』と感心するレベルです。

 ただ、話をを妙に複雑に設定してる割にはキャラの描き込みが浅くて無理のある展開が多く、出会って2日程度の主人公をヒロインがいきなり好きになったり、終盤で取って付けたような設定が出てきたり、博士も18年も前から『かなり行き当たりばったりの犯行』で殺人を繰り返してる割には今までの前科が全く疑われて無かったりと、色々とツッコミどころが多すぎです。

 特撮なんかもかなりショッパくて20年ぐらい前のようなレベルですし、かろうじて『テンポよく退屈せずに観られる』という点や『オチの持って行きかたの上手さ』なんかは及第点を満たしているとは思うのですが、それ以外の部分に関してはサスペンスとして観るにもホラーとして観るにしても、インパクトが弱くて『ちょっと厳しいかなぁ…』ってのが正直なところでした。


 総評としましては、かろうじて『観れないレベルじゃない』って程度の低予算サスペンスホラーといった感じの作品でしょうか?

 壊滅的にツマんない部分も無いのですが敢えてプッシュするほど良い部分も特に無いので、『TVとかで放映された時に片手間に観る程度』ならば丁度良いぐらいの映画といったところでしょう。

 ラヴクラフトを好きな人が設定に釣られて観た場合は、かなり肩透かしを食らわされるぐらいラヴクラフト成分は薄目なので、そっち方面に期待して観ようとしてる場合は、スルーしてしまった方が良いかもしれません…