NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「チレラマ」(55点/モンスター)

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■■■「チレラマ」■■■
(55点/モンスター)

 閉鎖を目前に控えたドライブイン・シアターの支配人のカウフマンは、劇場の最終上映として『あまりの下らなさや問題作すぎて今まで何処の劇場でも公開されなかった幻のカルトムービー』を一挙上映する事となる。

 劇場の閉鎖の準備をしつつ、亡き妻の写真とオーソン・ウェルズのポスターに語りかける彼だったが、そんな矢先、従業員のフロイドが股間を負傷した状態で遅刻して現れる。

 実はこの傷は墓場でゾンビに噛まれた事によるものであり、それが原因で劇場は恐るべきトラブルへと巻き込まれて行くのだった…



 閉鎖を間際に控えたドライブイン・シアターでカルト的な駄作映画を一挙放映する事となるが、そこで思わぬトラブルが発生して…という設定のオムニバス形式のコメディホラー映画。

 いわゆるグラインドハウス系の、或りし日のZ級ホラー映画みたいなノリを意識した内容のオムニバス作品なんだけど、単なるオムニバスホラーという形式ではなく『上映している劇場でもトラブルが発生し…』みたいな感じの2重構造になっているのは、なかなか面白いですね。

 とりあえず、オムニバス形式の各作品の簡単なレビューから…

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■「精子怪獣ワジラ」

 泌尿器科精子の検査を受けて、自分の精子が非常に弱い体質であると知らされたマイルズは、医師から精子を強靭にする『スペルマプラミン』という実験中の試験薬を薦められる。

 しかしこの薬には『性欲を感じると精子が巨大化してしまう』という恐るべき副作用がある事が発覚。

 彼の体から排出された精子は更に巨大化を続け、建物ほどのサイズになって人間を襲い始め遂には軍隊が出動するという事態へと発展してしまうが…

 精子が巨大化して人間を襲う』という、あまりにもバカバカしすぎる内容のモンスター映画。

 巨大化した精子が『牙を生やした巨大なオタマジャクシ』みたいな姿と化して人間を襲うという設定や、最終的には自由の女神を狙ってレイプしようとするという展開は噴飯ものながらも、全体的にテンポも良くてなかなか笑えます。

 グラインドハウス的な演出を狙った古臭い映像や、敢えていまどきストップモーションアニメを使って作られたモンスターの映像も良い味を出しています。
 個人的には本作中の4本の中では一番面白かった作品かな?

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■「ヤング クマ男の絶叫」

 1962年の南カリフォルニア
 高校生のリッキーは、ある日、車に轢かれそうなったところをタロンという不良に救われるが、その日から奇妙な『衝動』に襲われるようになる。

 ふとしたイザコサに巻き込まれた事からタロンの正体が獣人の『クマ男』であると知った彼だったが、タロンはリッキー自身にも『クマ男』の血が流れており、彼の感じている『衝動』こそがその証拠だと告げるが…

 『クマ男』の血を引き継いでいると知らされた青年の悩みを描いた、学園ミュージカル風のコメディホラー。

 『下らない』という意味では4本の中で最も下らないという、最も『本作のテーマにあった』内容の作品。(ツマらないんじゃなくてホントに『下らない』映画。)

 何故に突然ミュージカル仕立てなのか…何で主人公がゲイなのか…何で主人公の周辺の人間もあまねくゲイなのか…コメディ仕立てとは言えあまりに理不尽な展開の連発に、最初から最後まで乾いた苦笑いを顔に貼り付けつつ鑑賞せずにはおれない内容でした。(笑)

 というかアメリカでもやっぱり『熊男』というと、ゲイのイメージなんですな。
 獣男がゲイだけに『お尻が弱点』ってのもバカバカしくてなんともはや…

 下らなさすぎて目眩を禁じえないような作品ではありましたが、短編映画なのにミュージカル演出でいちいち話の流れがぶった切られるのは、ちょっとテンポが悪くて難点かも?

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■「アンネ・フランケンシュタインの日記」

 第2次大戦中、ナチスの総統は、ユダヤ人が『先祖の残した恐るべき死体蘇生実験』の秘密が記された『フランケンシュタイン博士の日記』を隠し持っているのを発見。

 強制収容所の死体を元に人造人間を作り出す実験を行うが、作り出された人造人間は思わぬ『良識』を備えていた事からナチスへと反抗をする事となり…

 ナチスが発見した『フランケンシュタイン博士の日記』をもとに人造人間を作り出すというコメディホラー映画。

 「アンネ・フランクの日記」のパロディっぽい内容なのかと思えばそうでも無くて、単に語呂合わせで『「アンネ・フランケンシュタインの日記」ってタイトルが使いたかっただけちゃうんか?』とツッコミを入れざるを得ないような内容で、色んな意味で色々と酷い内容です。(笑)

 ところどころに入る、イギリス風の「モンティ・パイソン」っぽいコメディはウザくて良い感じなのですが、いかんせん内容が無さ過ぎなうえにオチも無いも同然の投げっぱなしっぷりで、ちょっと中途半端な感じなのが残念なところかな…

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■「大便がいっぱい」

 ファーガビー監督の作った『観るものに激しい便意を催す』という特殊な信号によって、上映された劇場をウ●コまみれにしてしまうという謎の怪作。

 …となっていますが、実はこの作品はマトモに上映されずに(されても嫌だけど…)、冒頭から続く小芝居の続きである「ZOM-B-MOVIE」へとストーリーが展開していきます。


■「ZOM-B-MOVIE」

 冒頭と幕間で挿入されていたエピソードの続きで『職員の一人がゾンビに噛まれた影響で、ドライブイン・シアターにゾンビが溢れかえる』という、本作の本編に当たるストーリー。

 いわゆるコメディタッチのゾンビ映画ですが、冒頭と幕間の意味の無さそうな小芝居からストーリーが繋がって、最後の1本の短編をキャンセルして本編が展開していくって構成は、なかなか捻りが効いてて面白いですね。

 ストーリーらしいストーリーは殆ど無いですが、じいさんが映画の名台詞を連発しながらゾンビをショットガンでフッ飛ばすシーンや、ゾンビに追い込まれたヒロインと主人公のロマンス展開はちょっと面白かったです。

 あと、ラストの『劇中劇の更に劇中劇』みたいなノリや、エンディングのスタッフロールで各作品のエピローグやメイキングやカットシーンみたいなのが流れるという構成も、なかなかセンスが良くて良い感じ。

 Z級作品である事をウリにしているような内容なので、下らないぶんにはむしろ『下らなさ過ぎる』ほど良いって感じなので問題ないですし全体的なセンスも悪くは無いのですが…
 ただオムニバス形式とは言え、尺が2時間ぐらいあって幕間の小芝居(実は本編なんですが)とかが長めなせいで、全体的にちょっとダレ気味なのは難点かなぁ?


 総評としましては、個人的に『こういうノリは嫌いじゃない』って感じの内容ですが、そもそもが『Z級映画を敢えて作ってみました』というノリなので、肌に合わない人には全く肌に合わない作品でしょう。

 逆にそういう『Z級映画のノリ』が好きならば、それなりに楽しめる内容ではありますが、狙いすぎたが故にZ級と言うにはちょっと『突き抜けきれてない部分』も感じられるのが逆に残念なところかなぁ?

 とにかく下らない作品なので敢えて他人にオススメする事はしませんが、そういうノリに興味があるのであればチェックしておいても損は無い一本だと思います。
 ツッコミどころや惜しい部分も多いですが、アクマで『下らないノリにこだわった展開』は自分は意外と楽しめましたよ。