■■■「デス・マングローヴ ゾンビ沼」■■■
(55点/モンスター)
ブラジルの亜熱帯の湿地帯にあるマングローブ林に囲まれたエスピリトサントの村では、水質汚染の影響で村の周辺で魚やカニが獲れずに不漁となりつつあった。
そんなある日に村はずれに住むルイスは、マングローブ林にカニを取りに行っていた仲間のバチスタが酷い傷を負って帰ってきたところを保護する事となる。
バチスタは『動く死体に襲われた』という奇妙な言葉を残して絶命するが、その直後に死んだはずのバチスタがゾンビとなって復活。
ルイスはなんとか彼を猟銃で撃退することに成功するが、その頃、村を囲むマングローブ林では汚染された水の影響で死体が次々と復活し、村めがけて押し寄せて来つつあったのだった…
水質汚染の影響でマングローブ林の湿地帯で発生したゾンビの大群が集団で村を襲うという、ブラジル産のモンスターホラー映画。
以前にウチのサイトでも感想を書いた「吸血怪獣 チュパカブラ」を撮った、ブラジルの新進気鋭のホラー映画監督であるロドリゴ・アラガオの撮ったゾンビ映画です。
一応、撮影された時系列的にはコチラの作品の方が古くて、この監督の出世作となった作品のようですね。
お話としては比較的オーソドックスな感じのゾンビ映画といった感じのストーリーなのですが、特徴としてとにかくグロい、そしてキモチ悪い!!という、ゴア描写テンコ盛りのゴリ押しな感じの作品ですねぇ。
ゾンビ映画を撮るためにグロを描いているのではなくて、どう考えても『グロい映像を撮りたいがためにゾンビ映画を撮ってる』という感じで、徹底したグロ表現の連発はある意味で清々(すがすが)しさを感じるレベルです。
CGとかを利用していないアナクロなスプラッタ描写の連発で、脳天をカチ割ったり四肢を損壊するのは当たり前、マングローブ林の泥沼の映像と合わせて、過剰なまでの血糊とか内臓とかの血みどろの描写は、ゾンビ映画大好きな自分が観ても本気で気持ち悪くなるような勢いなので、その手の描写が苦手な人はネタでも観てみようとか思わない方が良いでしょう。
またストーリーに関しては前述のとおり有って無いも同然のレベルですが、ゾンビの描写やらストーリーテリングやらに「サンゲリア」の影響を受けているような部分が見受けられるので、そういう感じの映画が撮りたかったんだろうなぁ…というのは感じられます。
『ゾンビナマズ』とか『ゾンビ牡蠣』とかを出してみたりする辺りサービス精神も旺盛な印象ではありますが、「チュパカブラ」でもそうでしたがゾンビがキモいのは当然として監督の趣味なのか方針なのか、モンスター以前に登場人物や環境の殆どが物凄く不気味で不快なのはどうにかして欲しいですよ。
コチラの方は、作り物のゾンビと違って『生理的にキツい』部分が強いので、むしろ『ゾンビが出て来た後のほうが安心して映画が観れる』と感じたのは自分だけですかね?
こちらもサービス精神の表れなのかもしれませんが、サービスが過剰すぎるのも考え物ですよ…
とまれ、モンスターそっちのけで人間同士の抗争がメインだった「チュパカブラ」と違って、ゾンビの大群と戦う方が理不尽さも無くてスッキリ観れた分、本作の方がだいぶマシではありましたけどね。
オチの投げっぱなしっぷりや唐突さとかも、いかにも『在りし日のゾンビ映画のオマージュ』っぽくて、ツッコミどころは多いながらも嫌いでは無い感じの作品ではありました。
総評としましては、とにかく『やり過ぎゴア描写』にひたすらこだわった、スプラッタホラー全盛期のノリを踏襲したようなタイプのゾンビ映画ですね。
細かい事は気にせずに、とにかく『アナクロでグロい感じのスプラッタ描写をお腹いっぱいになるぐらい観てみたい』という人には文句無くオススメですが、そうでない場合は興味本位で観るにはちょっとキツい作品かもしれません。
逆に、たまには『80年代テイストのやりすぎゴア映画』を観てみたいという人であれば、サクッと楽しむ分には良い映画だと思いますので、そういう向きを求めているなら割とオススメできる内容かと…
まあアクマでそういう方面を狙って作られた作品ですので、興味があって観るにしても耐性の低い人は『心の準備(と食欲が減退しても問題ないような体の準備)』をしてから鑑賞した方が良い作品だと思いますよ。