■■■「360」■■■
(55点/サスペンス)
ネットの斡旋で高級娼婦をやることとなったブランカは、会社役員から指名を受けウィーンのホテルへと向かう事になるが、彼女を指名したマイケルが偶然にもホテルのロビーで取引先の仕事仲間と会ってしまったため、彼女と会う事を断念して指名はお流れになってしまう。
しかしマイケルの仕事仲間が彼の態度に不審なものを感じた事から、彼が娼婦を指名しようとしていた事がバレてしまい、マイケルは取引先の相手に思わぬ弱みを握られてしまう事となるが…
やがて思いがけずして、彼らの運命を中心に世界の7都市を舞台として男女の繋がりがメビウスの輪のように繋がっていくのだった。
世界の7つの都市を舞台にそれぞれの街に住む男女の奇妙な運命の繋がりを描いた、群像劇風のサスペンス映画。
SFパニック映画である「ブラインドネス」を撮ったフェルナンド・メイレレス監督によるサスペンス映画で、アンソニー・ホプキンスやジュード・ロウといった豪華キャストも出演したウチのサイトで紹介するにしては割とメジャーなタイトルかも?
「ブラインドネス」は、ぶっちゃけ群像劇とか雰囲気映画としては良く出来てたんだけどパニック映画としてはイマイチだったので微妙な印象だったのですが、本作は最初から『群像劇』をメインとして描いている感じなので、そういう意味では安心して観られる内容ですね。
お話の内容も、前述のとおり『色んな男女の思惑や運命が複雑に絡み合って一つの結末へと導かれていく』という感じの内容。
一応、カテゴリ的に「サスペンス」としていますが、そこまでサスペンス的な要素は無くて、ラストでちょっとソレっぽい展開があるぐらいかな?
7つの都市を舞台にした男女の絡み合いというと難解そうな印象ですが意外と良く整理されていて、あまりこんがらがらずに各キャラクターの設定が頭に入ってくる構成になっているのは良い感じ。
ただ7つの都市を舞台にしてるだけあってちょっと登場人物が多すぎる印象で、『途中で出てきたあのキャラは結局どうなったんだよ?』みたいな扱いのキャラも多くて、ちょっとモヤっとした気持ちが残ってしまうのは難点ですねぇ。
特に『敬虔なイスラム教徒の歯医者』とか『更正施設に向かう途中の元性犯罪者』とか、本筋にも殆ど絡んでこないし出てくる必要性があったのかと…
オチに関しては最初のシーンとリンクする形だったりと、なかなか面白い落としどころだと思いますが、前述のように『この話って、さっきの人たちの人生に全く影響与えてないよね?』って感じの扱いのキャラが居るのは、ちょっと不満かなぁ?
その辺をもう少し上手くまとめてくれて一つの大きな結末に向かっていくような構成になってれば、観終わった後にもっとスッキリとした気分になれて良かったかも?
また、人間ドラマを中心に描いているのでドラマとしては濃厚なのですが、サスペンスとしては大した事件が起こる訳でも無いですし、ましてや「ブラインドネス」のような人類の存亡を賭けた事態が発生する訳でも無いので、複数の視点を描いたドラマとしては面白かったものの全体的にちょっと地味な印象を受けたのは物足りない部分だったかも?
総評としましては、サスペンスとして観るとそこまででも無いですが、人間模様を中心とした『群像劇』や独特のテイストを持つ『雰囲気映画』が好きな人ならば、そこそこ楽しめる作品だと思います。
同監督の持つ映像センスや雰囲気が好きな人であれば、間違いなく楽しめる作品だと思いますので「ブラインドネス」とかの雰囲気やノリが好きだった人ならば、観ておいても損は無い一本でしょう。
逆にミステリーやスリラー的なノリを求めているのであれば、そういった要素は殆どありませんので、そういうジャンルとしては特にチェックする必要は無いかもしれません。