(60点/サスペンス)
自宅へ帰るために深夜バスに乗った看護師のアナは、バスが衝突事故を起こした直後に自宅のベッドで目を覚ます。
最初は単なる悪夢を見たと思い、そのまま外出した彼女だったが、街中に誰も居らず携帯やテレビの電波も通じないという異常な事態に遭遇。
街をさまよううちに同じバスに乗っていたフレディという男性に出会う。
2人はなんとかして奇妙な街から脱出しようとするが、街全体が奇妙な真っ黒い『煙のような壁』で囲まれており、約3日後には街の中心部までが煙によって飲み込まれてしまう事を知り…
奇妙な世界へと迷い込んでしまった2人の男女が脱出する方法を探してさまようという、サスペンススリラー映画。
いわゆる『異世界もの』のシチュエーションスリラー映画なのですが、全くノーチェックだった割には『そこそこの掘り出し物』といった感じの作品でした。
冒頭でバスの事故のシーンから始まり『バスの乗客だった2人の男女が異世界に飛ばされる』というシチュエーションから、『ああ、死後の世界的なアレね』というのは容易に想像が付くのですが、基本はありがちな設定ながらもそこからの謎解きが意外と面白い。
街を覆う『黒い煙の壁』と『煙の中に潜む怪物』の正体は何なのか、主人公の2人はどうしてこの世界に来る事になったのか、そして2人はどうすればこの場所から脱出できるのか…といった感じの謎解きがストーリーが進むごとに徐々に明らかになっていくのは、オーソドックスな構成ながらもなかなかに良い感じ。
『約3日で世界が黒い煙に飲み込まれてしまう』というタイムリミットが設定されているのでそれなりに緊張感もありますし、メインの登場人物が2人しか居ないためキャラクターの描写も細やかで、最初は『何だこいつら?』という感じだった主人公たちの2人に、ストーリーが進んでいくとキチンと感情移入できるような構成になっているのも上手いです。
シチュエーションスリラーの割には謎解きもシッカリと作られており、殆どの謎がキレイに解明されるのでラストであまりモヤモヤする事もなくスッキリと観終われるのも好印象ですが、オチに関してはやや賛否両論あるかも?
(『スタッフロールの後のワンカット』もちょっと意味深な感じですし…)
ただ良く出来てはいるのですが、基本的に低予算ですし登場人物もほぼ2人しかおらず、『煙の中に潜む怪物』というシチュエーションはあるもののそこまで出番が多いわけでも無いので、派手さとかは殆どありません。
また、小まめに謎解きとキャラの掘り下げがあるのでそこそこテンポは良いものの、やはり中盤にかけての展開がちょっと冗長で少し退屈に感じてしまう部分もあるかなぁ?
あと、ヒロインが男性と惹かれあうようになる理由が少し希薄な気がしたので、その辺はもう少し掘り下げがあっても良かったかも…
総評としましては、いかにもコテコテっぽい設定ですがコテコテの割には『意外と楽しめた良作のシチュエーションスリラー』といった感じの映画でした。
基本的に『謎解き』がメインなので、緊張感とかサスペンス的な要素とかを求めているとちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、逆にそういうシンプルな『謎解き要素』が好きな人ならば普通に楽しめる1本だと言えるでしょう。
強く推すほどでは無いものの、そういうジャンルが好きであればチェックしておいても損は無い作品だとおもいますよ。