NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ディセント ザ・ダークサイド」(60点/サスペンス)

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■■■「ディセント ザ・ダークサイド」■■■
(60点/サスペンス)

 父の葬儀で山中の墓地を訪れたテッドとブラッドの兄弟は、墓参りの帰りに墓地の側で偶然に『木の板で隠された深い縦穴』と『その底に広がる洞窟』を発見。

 父がこの辺りの土地を買い占めており、また穴の底に発電機や道具やらが持ち込まれていた事から、彼らは『父がこの縦穴を何らかの目的で調査していたのではないか』と考える。

 洞窟の行き止まりに、風が流れてくる小さな「穴」とその向こうに開けた空間を発見した彼らは、父がこの場所で何をしていたかに関する興味と、人跡未踏の場所を探検するという好奇心からその穴を工具で広げて中に侵入を試みる。

 しかし苦労をしてようやく穴を広げた彼らだったが、洞窟の奥から奇妙な『野獣のような唸り声』が聞こえてきた事から、洞窟の奥に『何か』が潜んでいるのではないかと恐怖を抱くようになり…



 死んだ父の残した『人跡未踏の洞窟』を好奇心から調査する事になったとある兄弟のたどる運命を描いた、モンスター物風味のサスペンスホラー映画。

 タイトルに「ディセント」とか付いていますが、本作も当然のように「ディセント」本編とは何の関係も無い、全く別のサスペンスホラー映画ですね。

 一応、『洞窟に侵入するシーン』とか『暗闇に潜む怪物』とか、少しだけ「ディセント」をインスパイアしてるっぽい印象を受ける部分もありますが、そもそも本作は『洞窟探検』がメインというよりも『兄弟の和解の物語』がメインのサイコサスペンスといったノリなので、ストーリー的には全く似ても似つかないようなお話です。
 (ちなみに原題は「LIVING DARK: THE STORY OF TED THE CAVER」(生きている闇:洞窟探検家テッドの物語)みたいな感じだし…)

 でも、パクリっぽいタイトルだからといって全く駄目な映画かと言うとそうでも無く、意外にもコレがなかなか良く出来た作品だったりします。

 パッケージにスティーブン・キング絶賛』みたいな売り文句が書かれていますが、なんというかソレも納得というぐらいに『非常にS・キングっぽいホラー作品』といった感じの内容で、主人公たちのキャラクターの掘り下げが非常に深くて、『何でもない日常が急転直下してホラーに変わる感じ』とか『ドラマ部分で色々と深読みさせるような作り』とかが、いかにもキング的。

 お話としては『洞窟探検もの+モンスターもの』という感じなのですが、ぶっちゃけモンスターの要素はオマケな感じで『心理ドラマ』がメインといった印象。

 なんでも無いものが『恐怖』の源泉となっていく過程が非常に丁寧に描かれており、たいした事件が起こる訳でも無いのに洞窟の『閉塞感』に加えて『何が起こるか分からない得体の知れない緊張感』が物凄く感じられるのような作りなのは面白いです。

 特に、洞窟の一人がギリギリ通れるような『岩の隙間』をくぐり抜けるシーンとかの緊張感も、まさに「ディセント」のような感じで閉所恐怖症の人間だとそのシーンだけで『勘弁してくれ』という気分になっちゃうかも?

 「ディセント」と違って、こちらは『怪物』の存在は味付け程度なのですが、むしろアッサリ具合が『兄弟が遭遇した怪物は本当に存在するのか?』という疑問を抱かせる感じになっていたり、主人公たちが洞窟に付けた名前が『フロイドの墓』というのも何となく意味深な感じで深読みさせるような構成になっているのも上手い部分ではないかと…

 ただ雰囲気映画やサイコスリラーとしては面白いのですが、前述のとおりにモンスターホラーとしての要素は弱くて、そっち方面に期待してると肩透かしも良いところかも?

 また終盤にはそれなりに盛り上がる展開もあるのですが、終盤まではロクに盛り上るようなシーンも無く心理劇が中心の展開になっており、全体的にちょっと冗長で退屈な構成なので、中盤辺りでちょっとダレてしまうのは辛いところ。

 あと『兄弟の和解』がテーマになってる割には、そもそも『和解が必要なほど仲が悪そうに見えなかった』ので、ちょっとその辺の印象が弱く感じてしまったのは惜しい部分でしょう。
 (ラストの展開とか良い感じなのに、ちょっと唐突さを感じてしまうんですよね…)


 総評としましては、特に期待していなかった割には『意外と楽しめたサスペンスホラー映画』といった感じの作品でした。

 「ディセント」のようなノリを期待していると流石に肩透かしを食らうかもしれませんが、S・キングの小説のような『日常のなんでもない部分に非日常が侵食してくる』みたいなノリの作品が好きならば、結構楽しめる一本なんじゃないかと思います。

 心理劇が中心のサスペンスホラーが好きな人や、色々と深読みするのが好きな人ならば結構楽しめる作品だと思いますので、そういうノリ+パニック映画的なノリの作品が観てみたいのであれば、割と普通にオススメ出来る一本だと思いますよ。