■■■「ロスト・ボディ」■■■
(60点/サスペンス)
ある夜、死体安置所の警備員がパニックを起こして森の中をを駆け回った後に、車に跳ねられて昏睡状態に陥るという事件が発生。
事件を捜査することになったペーニャ警部は、その死体安置所からマイカ・ビジャベルデという大富豪の女性の死体が消えている事を知る。
彼は事件の参考人として、マイカの夫であるアレックスに事情聴取を行う事になるが、実はアレックスこそは愛人と共謀してマイカを殺した犯人であり、殺した筈の妻の死体が消えた事に動揺を隠し切れないまま事情聴取を受ける事となり…
死体安置所から突如として消失した死体の謎を巡って驚くべき事実が明らかになっていく…という、スペイン製のサスペンススリラー映画。
以前にギレルモ・デル・トロの製作で作られた「永遠のこどもたち」や「ロスト・アイズ」という佳作サスペンス映画を作ったチームによる新作サスペンス映画という事で割と期待していたのですが、本作も期待を裏切らないレベルでなかなか良く出来た作品になっています。
本作の特徴は、何と言っても『恐ろしい程に展開が早い』という事。
『警備員は何に怯えたのか』、『奥さんの死体はどこに消えたのか』、『旦那の企んでいた奥さんの殺害計画とはどんなものだったのか』といった具合に、次から次へとつるべ打ちように新たな謎が提示されていき、物凄い勢いで物語が進んでいきます。
なんせ、お話が始まった10分後ぐらいには『奥さんを殺した犯人』が判明。
それから5~10分おきぐらいに『新たな謎』と『手がかり』が提示されて、その度に更に物語が二転三転を繰り返していくので、ホントに息付く暇も無いようなテンポの良さです。
アメリカのTV映画とかって、こういう『テンポの早い作品』が多いですが、それを更に1.5倍速にしたぐらいのイキオイで、「ロスト・アイズ」もかなり展開の早い作品でしたが、本作は普通のサスペンス映画を3本分ぐらい詰め込んでいるような超高密度の高速展開といった感じで、途中で全く退屈する暇もないような作りなのは見事。
またそんな内容なので、ぶっちゃけ中盤まで『この映画ってちゃんとオチが付けれるのかよ?』と不安になるような部分もあったりしたのですが、終盤に向けて割とキチンと謎解きをしてシッカリと伏線を回収する構成なのは良い感じですね。
ただ、中盤までは『物凄く展開の早さ』と『意外な事実の連発』でかなり面白いのですが、終盤の謎解きが理路整然として説明的すぎるせいで、ちょっと『ご都合主義的』で安易な印象を受けてしまうのは惜しいところかなぁ?
ラストも確かに『意外な展開』って言えばそうなのですが、多少の伏線を張ってたにしても『唐突過ぎるだろ?』って言うような展開ですし、ちょっと欲張って色々と詰め込みすぎたせいでグテグテになっちゃった感じ…
ぶっちゃけ『そこまで無駄に捻る事は無いだろ』って感じのオチだったので、逆に謎解きにせよ意外性にせよ、もうちょっと全体的な密度を薄くして王道な部分も残した方が素直に楽しめる作品になったんじゃないかなぁ?
総評としましては、ビックリするぐらいテンポが良くて『とにかく退屈せずに楽しめるサスペンス映画』といった感じの作品です。
サスペンスやスリラー映画が好きであれば、この『異様なまでの詰め込みっぷり』は一見の価値があると思うのですが、逆にあまりの密度の濃さに胸焼けをおこしちゃう人も居るかも?
『意外な展開』をゴチャゴチャ詰め込み過ぎたせいで、全体の印象が薄くなってしまってるようで、ちょっと惜しい感じの印象を受ける作品でしたが、同スタッフの作品が好きで気になっているのであればチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。