■■■「オーガストウォーズ」■■■
(65点/アクション:結構オススメ)
2008年の8月。
前の夫と離婚しモスクワで暮らすクーセニアは、南オセチアで平和維持軍の任務に就く元夫のザウールから、『両親に孫の顔を見せたい』という要求を受け幼い息子のチョーマを彼の元へと預ける事となる。
しかし国境地帯でいまにも戦争が開始されそうだという情勢を知った彼女は息子を連れ帰るべく国境の村へと向かうが、果たして彼女が南オセアチアへと到着した直後にグルジア軍が侵攻を開始。
ロシア軍とグルジア軍が戦火を交わすたさなかで国境の村へと交通手段を失ってしまった彼女は、なんとかして息子を救う為に単身で最前線の村を目指そうとするが…
2008年に南オセチアの独立を巡って起こった紛争に巻き込まれてしまったとある家族の辿る運命を描いた、戦争アクション物のヒューマンドラマ。
パッケージや予告を見た時に、てっきりトランフスフォーマー的なSFアクションものかと思っていたのですが、実際にはそんな要素は微塵も無い(いや微塵ぐらいはあるか?)レベルの予想以上にシリアスな戦争ドラマでした。
お話としては、『2008年の南オセチアの独立を巡ってグルジアとロシアが戦争状態になった際に、最前線に取り残されてしまった息子を母親が命がけで救い出そうとする』という、思いっきりマジメな『戦争ドラマ』であり『ヒューマンドラマ』な内容です。
ちなみにそんな作品のどの辺りに巨大ロボットが絡んでくるのかと言えば、実は『主人公の息子の好きな舞台劇に登場するキャラクター』という設定で、子供が見る夢(というか幻)の中に登場するだけで本編には全く絡んできませんので、ロボットもののSFを期待してる人は勘違いしないように要注意。
(まあ子供が見る『ロボットの夢』の設定自体は、作品に良い感じのアクセントを与えているので悪く無い演出だとは思うのですが…)
ロボットの話はさておくとして、本作の内容自体は非常に重厚な戦争ものの人間ドラマという感じで非常に面白いです。
銃弾の飛び交う戦場で命の危険に晒されながらも必死になって息子の元へとたどり着こうとする母親の愛情の強さの描かれ方も良いですし、アクマで『民間人の視点』から戦争を描く事で『今も世界のどこかでこういう事が起こっている』という事を考えさせられるようなリアル感も良い感じ。
ヒーローや軍人ではない等身大の主人公を中心にお話を描く事に徹底しているため、色んな意味で戦争の怖さや親子の絆の切なさを感じられます。
またロシア軍が全面協力したという戦闘シーンも、実際の戦車や装甲車が登場したりと非常にリアリティがあって良い感じ。
ところどころに挟まれたロシアの首脳会議のシーンも、当時の世界情勢なんかが良く分かって面白いです。
ただリアルに戦争を描くと言っても、そこまでドロドロした内容ではなくある程度は主人公をヒロイックな感じで描いており、その辺の過剰にならない程度のヒロイズムとリアリティのさじ加減が非常に上手い。
残酷なシーンが苦手な人にも観れる程度の内容で『戦争の怖さ』が伝わるような作りですし、ラストの思いがけずに熱い展開も意外性があって良かったですし、オマケ程度のロマンスの要素も良い味付けになってますし、なんというか『バランス感覚の良い監督の撮った映画だなぁ』と素直に感心させられましたよ。
ただ全体の尺が140分近くあり序盤が若干冗長でダレがちな点や、長くてなかなか話が進まないので途中でちょっと疲れてきちゃう点は、ちょっとだけ難点かな?
あと本編とは関係ないですが、どうやっても誤解されるような予告とかパッケージを作った配給会社の売り方は、ちょっと問題があるかも…
総評としましては、『予想以上に濃厚で楽しめる内容の人間ドラマを描いた戦争映画』という感じですかね?
派手さはあまり無い作品ながらも『普通に戦争ものが好きな人』であれば十分に楽しめる内容だと思いますし、家族愛をメインテーマとして描いているので戦争映画の『残酷な描写』が苦手な人にもオススメできる良作だと思います。
ロボットSFものと騙されて観た人がどういう感想を抱くかは分かりませんが、自分的には『騙されても十分に元が取れる内容』だと感じましたので、戦争ドラマ系の作品が好きならば割とオススメの一本ですよ。