■■■「ウォーム・ボディーズ」■■■
(65点/モンスター:オススメ)
近未来、ゾンビが大量発生してから8年の年月が経ち、人々は武装して巨大な「壁」を建設しその中に立て籠もってゾンビと戦いながら暮らしていた。
ゾンビの青年である「R」は、ゾンビ化しつつもわずかな意識を持ち、他人とマトモにコミュニケーションを取れなくなった事に不満を抱きながらも、ゾンビとして無気力に生活を送っていた。
しかしそんなある日、物資の補給に来ていた人間達を襲撃した際に、とあるきっかけから理性を取り戻した彼はジュリーという少女を助けてかくまう事となる。
最初はゾンビである「R」に怯えていたジュリーだったが、彼の不器用な優しさに触れるうちに心を開いていき、その優しさはやがて「R」の存在自体も変化させていくのだった…
ゾンビと人間が戦って暮らす世界でのゾンビの青年と一人の少女の恋愛を描いた、ゾンビ映画風味のラブストーリー。
最近、ソンビもののラブストーリー的な映画がちょっと流行っている感じで、何本かの作品が作られてますが、その中でも最もマジメに『ラブストーリーしている作品』といった感じの映画ですね。
本作はむしろ『ゾンビ』という設定は添え物で、ラブストーリーの方がメインと言っても良いレベルのお話かも?
ストーリーとしては『とあるきっかけで一時的に心を取り戻したゾンビの青年が一人の少女を助け、その少女と触れ合ううちに人間としての心を取り戻していく』みたいな感じで、良い意味でも悪い意味でも非常にマンガ的な内容。
(もともとティーン向けのノベル作品らしいですが…)
基本的にゾンビ主人公の主観と独白が中心に物語が進んでいくのですが、ゾンビの青年であるRがイケメンな上になかなか可愛いところがあって、非常に好感が持てるキャラクターなのが好感触。
ロマンスがお話の中心となるのでゾンビもの的な要素は薄めで、残虐描写とかも殆ど無いのでそういうのが苦手な人でも楽しめると思います。
また主人公やヒロインの心情の描写なんかも割とシッカリとされているのでお話そのものは退屈するような内容では無いのですが、ホラー要素やアクション要素は非常に薄くて派手な展開とかも終盤にちょっとだけしかないので、人によっては冗長に感じてしまうかも?
でも終盤の展開なんかは、なかなか熱くて良い感じでした。(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)
あと作品が単なるラブロマンスではなくて、『人は自分のなりたいものに変われるのか』とかって感じのテーマ性なんかが非常に分かりやすく描かれているのも良い部分と言えるでしょう。
ただ「ロミオとジュリエット」的なオマージュとして恋愛要素が描かれてる割には、恋愛映画としてはちょょっと内容が薄くて盛り上がらない部分もある(まあ主人公が感情希薄なゾンビなので大恋愛ってのも無理があるのですが…)ので、その辺も不満に感じる人は不満に感じるかなぁ…
全体的に『良い話』ではあるのですが、個人的にはラストのオチがちょっと説明不足でご都合主義的な力技のように感じてしまったのは、ちょっと残念なところ。
(まあ、ハリウッド映画的な展開としては十分にアリだと思うんですけどね。)
総評としましては、マンガ的なノリながらも『なかなか良く出来た恋愛ものゾンビ映画』といった感じの作品です。
ちょっと変わったノリの「ゾンビ映画」や「恋愛映画」が観てみたいという事であれば、そういう『マンガっぽい展開』が嫌いじゃなければ普通に面白く楽しめる作品だと思います。
逆にゾンビ映画的な要素は非常に薄く、物悲しいネガティブな要素とか陰惨な要素とかは皆無の作品ですので、普通のゾンビ映画的なノリを期待してる人は肩透かしを食らわされてしまうかもしれませんので要注意かも?
でも、自分は恋愛映画は苦手なタイプなのですが、個人的には予想以上に楽しめた作品でしたよ。