■■■「ナイトメアは欲情する」■■■
(65点/サスペンス)
医師のルーカスは、脳の感覚情報の伝達を調査する実験としてヨーナス博士の指揮のもと、昏睡状態の見知らぬ患者の脳内へと感覚を伝送する実験を行う事となる。
患者の脳内へと入り込んだ彼は脳内世界で一人の女性と出会い、彼女に求められるがままに彼女の事を抱き、脳内に入り込む度に医師たちには秘密で彼女との逢瀬を繰り返して行く。
やがて彼女に惹かれるようになったルーカスは、現実の世界でも彼女を救うことが出来ないかと考えるようになるが…
他人の脳内に感覚を伝達する実験に参加する事となった男が、脳内世界で出会った一人の女性を巡る奇妙な事件に巻き込まれていくという、サイコサスペンス映画。
なんか変なタイトルとパッケージの怪しげな映画のように見えますが、何でもいとうせいこうやみうらじゅんらがTV番組の企画でタイトルを決めた作品だそうで…
中身の方は割と良質なサスペンス映画なのに、こんなトンチキなタイトルを付けられてイロモノ作品と勘違いされないかとちょっと不安なところ。(ちなみに原題はVANISHING WAVES)
お話の中身はいわゆる医療実験もののサイコサスペンス作品で、『昏睡患者の脳内にダイブする』という割とありがちな設定なのですが、リトアニアの映画監督が撮った作品らしく独特の世界観やセンスが良い味を出している作品です。
脳内世界ものというと『被験者の過去とか秘密を探るサスペンス』というのがお約束で本作も大筋はその例に漏れないのですが、主人公が脳内世界で女性と性的関係を持ってみたりと、ちょっとエロティックな展開があるのは特徴的ですね。
そのエロティックなシーンが妙に幻想的なうえに矢鱈とフェティッシュで、なんともいえない独特のテイストをかもし出しており、雰囲気映画としてはなかなか良い感じ。
また、脳内世界というと矢鱈とサイケデリックな『悪夢的』な映像が多様されるイメージの作品が多いですが、本作では妙にピントの合わない感じのどこかで観たような景色やら積み木で出来たような家やら、現実にいかにも夢の中に出てきそうな世界なのは、なかなか良いセンスではないかと…
お話の方も謎解き要素をメインにしつつも、恋愛的な要素やらそこから発生する主人公のエゴイズムやら狂気やらも描かれていて、主人公の行動が身勝手なのか愛情から来るものなのか一筋縄では行かない感じなのは面白いです。
ラストのオチもなんとも言えない後を引くような終わり方で、色々と考えさせられるような展開なのも良い感じ。
ただ雰囲気映画の特徴と言うべきか、観ていて結構『眠くなるような作品』で、自分は深夜に観ていた事もあって途中で一回寝落ちしてしまいましたよ…
退屈な内容ではないのですがお話のテンポも良いとは言えないですし、そういうテンポの遅い作品が苦手な人には、ちょっと辛い映画かもしれません。
総評としましては、非常に個性的なテイストながらも『なかなか良く出来た雰囲気のサスペンス映画』といった感じでしょう。
かなり個性の強いテイストを持った作品ですが、旧共産圏的な映画の持つ独特の雰囲気が好きな人ならばハマれる作品だと思いますよ。
とりあえずその手の映画が好きな人とか雰囲気映画が大好きな人ならばなかなか楽しめる一本だと思いますので、気になるようでしたらチェックしてみても良いのでは無いでしょうか?