■■■「AAAH! ゾンビーズ!! 俺タチだって生きている」■■■
(50点/モンスター)
アメリカ陸軍が『超兵士』を作るために行った人体実験によりゾンビが誕生。
アメリカ軍はこれを隠蔽するために薬品を廃棄する事となるが、輸送中の事故で薬品が漏出してしまう。
ボーリング場でバイトするティムらの4人の若者たちは、知らず知らずのうちにこの薬品で汚染されたソフトクリームを食べてしまった事から、知らず知らずのうちにゾンビ化してしまう。
しかし自分たちがゾンビと化してしまった事に気付かない彼らは、突如として『街の住人が攻撃的になりおかしくなってしまった』と勘違いし、なんとかして自分たちの身を守ろうとするが、そんな矢先にニックと名乗る軍人が彼らの前に姿を現し…
軍の作り出した謎の薬品の影響でゾンビ化してしまった4人の若者たちが、なんとかして自分たちを襲うトラブルから逃れようとするという、ゾンビ映画風味のコメディホラー映画。
最近、ゾンビ映画の界隈で流行りつつある『主人公がゾンビになっちゃうタイブのコメディホラー映画』の新作ですね。
なんでも各国のホラー系の映画祭で映画賞を受賞した作品との事ですが、評判の割には『うーん?』って感じの作品です。
本作の最大の特徴は、ゾンビになった主人公たちが『仲間(ゾンビ)たちの間では普通の姿に見えてるんだけど、他の人間からはゾンビに見えてる』というギャップの面白さ。
自分では普通に手を上げて挨拶しているだけでも、普通の人間から見ると『ア´ーッ』とかうなりながら近寄ってきているように見えて、怯えた人間から攻撃されるというコメディ的な展開が描かれてるのですが…
主観だと華麗なカンフーのポーズを取ってるつもりが、ヨタヨタと暴れてるだけだったり、ヒロインとのロマンチックなキスシーンがお見せできないようなグロ映像になっていたりと、この『主観画面』と『客観画面』の絵面のギャップが非常にバカバカしくて良い味を出しています。
主人公たちがゾンビになると、周りの人間の声が早回しのように聞こえて会話が出来なくなるってのも、なかなか面白いアイデアですね。
ただ、この『主観視点と客観視点』というアイデアは非常に面白いのですが、お話そのものが面白いかと言われると、なんとも微妙なところなのが残念なところ。
確かにアイデア自体は1発ネタとしては面白いんですけど、今ひとつコメディとして活かしきれて居ない感じなんですよねぇ…
誤解された主人公たちがショットガンで吹っ飛ばされたり腕を切り落とされたり(でもゾンビなので平気)というネタは確かに最初は面白いんですけど、全編を通して同じようなネタの繰り返しなので、ぶっちゃけ途中でちょっと飽きてきます。
また主人公たちが一般人に襲われた際に(もちろん主観から生まれる誤解)、反撃して相手を殺してしまったりするんですけど、この際に主人公たちが特に罪悪感を感じている様子も無い辺りとか、どうにも設定に違和感を感じてしまって素直に笑えないシーンが多いんですよね…
何というか、『ブラックなネタ』を描きたいのか『スラップスティックコメディ』を描きたいのかが今ひとつはっきりしない構成のせいでモヤモヤしてしまう感じになってるんじゃないかと思うので、全体的にもうちょっとブラックユーモア的な要素を強く押し出した方が良かったんじゃないかなぁ?
お話はコメディとしてはテンポは悪く無いとは思うのですが、どうにもゴチャゴチャしすぎて『とっ散らかりすぎな印象』が強いのも気になったところですね。
特に終盤のボーリング大会のシーンとか要らなかったんじゃないかと…
ラストのオチも『そんなんで良いのか?』って感じで微妙に納得が行かないような終わり方ですし、全体的に『もっと暴走するなりもうひと捻りあるなりのもう一歩の何か欲しかったかなぁ?』ってのが正直なところですよ。
総評としましては、確かに初見のインパクトはありますしそこそこ面白いんですけど、『インパクトだけの出オチ的な作品』という感じなのが残念なところ。
まあ『お馬鹿なインパクトのある映画』という意味では、なかなか良い味を出してる作品だと思いますので、そういう感じの一発ネタ的なコメディを求めているのであれば見ておいても損は無い一本だと思いますよ。
ただ出オチ系映画にありがちな感じで『予告で面白い部分が殆ど出尽くしている』タイプの作品なので、急がなければとりあえず予告だけでもチェックしておくと良いかもしれません。(笑)