■■■「ハウンター」■■■
(70点/オカルト:オススメ)
霧の深いある朝に、女子高生のリサは自分の居る世界が『16歳の誕生日の前日』で延々とループしている事に気付く。
異常事態を両親に話しても理解してもらえず、家から脱出しようにも同じ場所に戻ってきてしまうためになすすべも無く同じ毎日を送っていた彼女だったが、家の中を調べるうちにこの世界の『裏の世界』とでも言うような場所に、彼女の存在に気付いている『もう一人の少女』が居る事に気付く。
果たして謎の彼女とコミュニケーションを取るために、家の中を調査していくリサだったが、やがてこの家に隠された驚くべき秘密にたどり着くのだった…
時間のループした世界に閉じ込められた一人の少女が、この世界に隠された秘密を探るうちに驚くべき真実にたどり着くという、オカルトサスペンス映画。
「CUBE キューブ」や「スプライス」でお馴染みのヴィンチェンゾ・ナタリ監督の新作ですが、氏のどちらの作風ともかなりノリが違う感じの作風ですね。
前作の「スプライス」が『ケレン味はあるもののオーソドックスなモンスター映画』だったのに対して、本作は『オーソドックスなオカルト映画と思わせておいて実は…』という変化球で攻めて来たような内容で、意外性があってかなり面白いです。
ジャンル的にはオカルトサスペンス映画なのですが、どちらかというとダークファンタジー的なノリに近い作品ですね。
お話としては『時間のループする世界に閉じ込められた少女が、真実を求めて世界の秘密を探る』みたいな展開で、コレだけならば割とありがちなセカイ系のSFやファンタジーの設定という感じなのですが、本作は更にここからの『ひと捻り』が効いていてお話が一筋縄では行かないのが良い感じ。
序盤は『ダークファンタジー系の雰囲気映画かな?』と思わせておきながら、『もう一つの世界の少女』は何者なのか…という事や『この世界に何が起こっているのか』という謎解き要素が加わるによって、お話がどんどん二転三転していくため雰囲気映画でありながらも、テンポ良く退屈せず楽しめるのは良いですね。
サスペンス要素に関しても、単純に『世界の秘密』を探るだけじゃなくて、『ループした世界』の演出が謎解きに効果的に使われてたり、主人公の行動が『もう一つの世界』とリンクしていたりと、なかなか意外性のある凝った作りなのも面白いです。
またかなり終盤までお話の『着地点』が見えないので、先の展開が全く予想できないのも上手いですし、ファンタジー寄りな内容とは言いながらも序盤の伏線やらがキチンと回収されてて矛盾も殆ど無いので、サスペンスの構成としての上手さには素直に感心させられましたよ。
惜しむらくは、ラストの展開がちょっと弱くてインパクトに欠けるのと、オチが少しご都合主義的なところかなぁ…まあ不満点という程ではないので、なかなか『良い落としどころ』ではあるの思うんですけどね。
総評としましては、世間ではあまり話題になってない作品ですが掘り出し物的な『非常に良く出来たオカルトサスペンス映画』だと思います。
大作映画のようなパンチやインパクトは無いものの、全体的に『シッカリと纏められた良作サスペンス映画』という感じだったので、テンションを上げすぎずにノンビリと楽しみたい気分の時には最適の作品でしょう。
雰囲気映画系のオカルトサスペンスが好きな人や、時間ループものの作品が好きな人ならば普通にハマれる作品だと思いますので、その手のジャンルが好きであれば間違いなくチェックしておいて損は無い一本だと思いますよ。