NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ザ・スリル」(60点/サスペンス)

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■■■「ザ・スリル」■■■
(60点/サスペンス)

 町の自動車工場で働く整備士のクレイグは、ある日、人員削減のために会社を突然クビになってしまう。

 妻に赤ちゃんが生まれたばかりのうえに貯金もなく家賃すら払えないような情況の彼は、途方に暮れて行く当ても無くバーに立ち寄るが、幼馴染で裏の仕事に手を染めているヴィンスと5年ぶりに再会。

 お互いの置かれた情況を嘆きつつ酒を飲んでいたところ、バーで出会った異常に羽振りの良い金持ちの夫婦から『ゲームに参加して勝った側に賞金を出す』という話を持ちかけられる。

 その内容は、最初は『お酒の一気飲み勝負』やら『バーでナンパした女性にビンタされる』というような下らないもので、お金に困っていた事からお互いに首尾よく小銭を手に入れて喜ぶ彼らだったが、徐々にその『ゲーム』の内容は非常識なものへとエスカレートしてゆき…



 職を失って生活に困窮する一人の男が、金持ちの道楽の『ゲーム』に付き合わされた事から思いがけない運命を辿る事となるという、サスペンススリラー映画。

 サスペンス系のインディペント映画際で高い評価を得た作品という事ですが、なかなかどうして確かに良く出来た作品です。

 ただ確かに面白いのですが、なんと言うか良い意味でも悪い意味でも『非常に趣味の悪い作品』という感じの映画ではありますね。

 設定だけ見ると『最初は下らない悪ふざけのゲームなんだけど、徐々に内容がエスカレートして行き…』みたいな展開は、この手のサスペンス映画では定番とも言える感じなのですが、定番ゆえに全体的に非常に丁寧に作られている印象。

 まずキャラクターや世界観の描き込みが非常にシッカリとしており、主人公とその友人の『堅気だけど生活が追い詰められた男』と『ヤクザまがいの仕事をしている利己的な男』という2人の対比が良く出来ているのが良い感じ。

 このシッカリとしたキャラクターの描写のお陰で、2人の男たちが徐々に『引き返せないライン』まで追い詰められていく様子が、なかなかリアリティのあるものになっているのは上手いです。

 この手のシチュエーションの映画では、主人公の『動機』が不明瞭で『いや、そんな事やらないだろ』みたいなノリになりがちな作品が多いのですが、この作品では『このぐらいならやっちゃうかも?』って感じの悪趣味な『ゲーム』の線引きのラインが割と絶妙で、妙なリアリティがあるんですよね。

 ゲームを仕掛ける金持ち夫婦の変態趣味っぷりも、『極度に不快にならない程度の悪趣味さ』といった感じで良い味を出しており、全体的に非常に『バランス感覚の良い映画だなぁ』という印象です。

 バランス感覚だけではなく、お話そのものも途中で二転三転するような先の読めない展開で、テンポが良くて退屈しない作りなのは好感触でした。

 ただ中盤までの『ゲーム』の要求がショボ目なのに対して、ラストの要求だけ矢鱈と唐突で重すぎる気がしたので、もうワンクッションぐらいネタを挟んでも良かったかも?(まあ尺の都合もあるのかもしれませんが…)

 オチのブラックな展開と『なんとも言えないような感覚』はなかなか良かったので、もうちょっとラストに向けて『盛り上がる展開』を丁寧に描いてくれてたらもっと良くなったと思うんですけどねぇ…


 総評としましては、全体的に非常に丁寧に作られた感じの『独特のテイストのある良作サスペンス映画』といった感じの作品ですね。

 ただ最初に言った通り、なかなかに『悪趣味』な部分の強い映画ですので、人によって好みの分かれる内容なんじゃないかなぁ?

 そんな訳で、万人にオススメするにはちょっと微妙な作品ではありますが、『ちょっと毛色の変わったブラックで悪趣味なノリのサスペンス』とかが好きな人ならばハマれる内容だと思いますので、そういうのが好みであればチェックしておいて損は無い一本だと思いますよ。