NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「スノーピアサー」(65点/アクション)

イメージ 1

■■■「スノーピアサー」■■■
(65点/アクション)

 2014年7月1日、人類は地球温暖化を食い止めるために冷却物質『CW-7』を地球上に散布するが、冷却材の予想以上の強力な効果によって氷河期が到来してしまう。

 地球上の殆どの生物は死滅してしまい、人類は自給自足のシステムと永久機関を搭載した巨大な弾丸列車である「スノーピアサー」へと乗り込んだ人々だけが生き延びる事に成功していた。

 そして17年後の2031年、スノーピアサーの乗客は前方車輌の裕福層と後方車輌の貧困層に扉によって隔てられ、貧困層の人間は裕福層の人間に支配されて暮らしていた。

 そんなある日、貧困層レジスタンスのリーダーであるカーティスは、貧困層の人たちを解放し車輌最前列に居るというスノーピアサーの支配者を倒すために、牢屋に捕らえられているというセキュリティの専門家のナムを救出するという計画を実行するが…



 近未来、滅亡に瀕した人類が生き延びるために乗り込んだ『走る箱舟』である「スノーピアサー」での裕福層と貧困層との戦いを描いた、サスペンス風味のSFアクション映画。

 グエムル-漢江の怪物-」等を撮ったポン・ジュノ監督による新作映画で、いわゆるディストピアもの近未来SF』といった感じのお話ですね。

 永久機関とエコシステム(生態系)を搭載した『走る箱舟』という設定はなかなか個性的で面白いのですが、ただSFとして見る間でもなく『色々とツッコミどころが多過ぎ』な設定ではありますね。

 そもそもそういう『箱舟』的な永久機関を備えた列車が実際にあったとしても、『超高速で走り続ける』事に対する意味が全く無い(寒波を逃れるために移動し続けてるとかって設定ならともかく)ですし、列車に乗ってる人たちしか人類が生き残ってないなら17年間も誰がレールの整備とかをしてるんだと…

 また生態系を維持するにはどう考えても列車のサイズが小さすぎるので、説得力や迫力を持たせるためにもサイズはあの5倍ぐらいはあった方が良かったんじゃないかなぁ?(乗客も『人類の最後の生き残り』にしては少なすぎだし…)

 主人公が『車輌の最後尾から困難を越えながら前の車輌に向かっていく』って絵面が欲しかったのかもしれませんが、なんか全体的に『ディストピア』というよりも『色んな仕掛けのあるアトラクションの列車を前の車輌に向かって進んで行ってる』という雰囲気で、どうにも初期設定の部分での引っかかりを感じましたよ…

 ただSF的なツッコミどころはさておき、お話の自体はなかなか悪く無い感じではありますね。

 まず要所要所に見せ場が用意されており、アクション映画としてはテンポが良くてなかなか良好な印象。
 『洗脳プロパガンダ映像』とかの、いかにも『レトロSF的なディストピア演出』なんかも良い味を出してますし、敵役のキャラも個性的でアクションシーンに矢鱈とインパクトがあります。

 単なるアクション映画かと思いきや一筋縄で行かない『意外な展開』なんかも仕込まれてたりしてお話自体もなかなか良く出来ており、ちょっと先の読めない感じの作りなのは面白いです。

 色々と突っ込みどころやつじつまの合わない部分は多いですが、そういう細かい部分はあまり気にせずに楽しめる感じのノリとイキオイがあるのは良い感じですね。

 ただイキオイが重要な作品なのに『基本設定』のような部分でハッキリしない部分が多く、特に序盤~中盤で『主人公の勝利条件』(先頭車両に辿り付いて何がしたいのか?)が良く分からないせいで作品に入り込めずにモヤっとした気分になってしまったのは気になったかも?

 もうちょっと『主人公が叛乱を起こすための動機付け』をシッカリと描いて、主人公の行動の『正義』たる部分をハッキリ描いた方が良かったんじゃないかなぁ?
 (一応、終盤では明かされるんだけど…)

 また終盤の展開は確かに意外性があって面白かったんだけど、ラストがちょっとダラダラした感じなうえにアクションシーンも無くて盛り上がりに欠けたのも気になったかも?
 なんかオチが『えっ、そんな終わり方なの?』みたいな展開になるのは、この監督の特徴なのかなぁ…


 総評としましては、色々とツッコミどころは多いものの、それを差し引いても『なかなかイキオイがあって楽しめるSFアクション映画』といった感じの作品です。

 作品のスケールからもSFとしてはちょっと小粒感が拭えない部分もありますが、スピード感のある個性的なSF映画を求めているならばそこそこ楽しめる一本だと言えるでしょう。
 ディストピアものとしてはちょっと『詰め込み過ぎ』なきらいはあるものの、アクションSF的なノリが好きで予告とかでみて本作が気になっているのであればチェックしておいても損は無いと思いますよ。