■■■「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」■■■
(55点/モンスター)
司書であるジョナサン・ハーカーは、妻ミナの友人であるルーシーから、地元の名士であるドラキュラ伯爵の城で図書館の整理の仕事を紹介された事から、パスブルクという小さな村を訪れる。
数日遅れで到着したミナは、数日前から夫が城から帰っていない事を聞かされた事から、夫に会うためにドラキュラ伯爵の居城へと訪れるが、それはミナを自分の城へと呼び寄せるためのドラキュラ伯爵の仕掛けた罠であり、夫のハーカーは既に彼の毒牙へとかけられていたのだった。
ドラキュラ伯爵の居城で奇妙な体験をしつつも何とか村へと帰ってきた彼女は、行方不明の夫や友人の死という相次ぐ不気味な現象からドラキュラ伯爵へと不信感を抱くようになるが、そんな矢先に怪現象のウワサを聞きつけて村へと訪れたヴァン・ヘルシング教授という男から、ドラキュラ伯爵の恐るべき正体を知らされる事となり…
イタリアンホラーでお馴染みのダリオ・アルジェント監督による、「吸血鬼ドラキュラ」を題材としたゴシック風味のモンスターホラー映画。
恐らくあちらのTV映画向けに作られた作品だと思うのですが、アルジェント監督という事でちょっとキワモノ的なノリかと思いきや、ごく普通のゴシックホラー的でオーソドックスな「ドラキュラ」映画という感じの作品で、いつものアルジェント監督的なテイストは殆どありませんでした。
お話の中身の方は、良く言えば『雰囲気が出てる』のですが悪く言えば『凄く地味』な映画って感じですね。
60年代とかのハマーフィルム作品を意識したのかもしれませんが、映像が全体的に古臭くてホントに70年代の映画を観てるようなノリで、特撮のCGとかもごく一部しか使われておらずに、実際に60年代に作られた映画だと言われれば思わず信じてしまいそうなレベル。
低予算との兼ね合いでこういう表現を狙ったのかもしれませんが、最近の映画としてはどうにも地味で盛り上がりに欠ける印象を受けざるを得ません。
でもまあお話自体は割と良く出来ており、オリジナル版をベースとしつつ上手くアレンジしている感じで、ドラキュラ伯爵が何故にヒロインに執着するのかとかの伏線の張り方や回収の仕方も上手いですし、ドラキュラ伯爵のキャラもなかなか魅力的で良く立っていると思います。
逆にヘルシング教授は『うらぶれた中年のオッサン』みたいな外見なので、もうちょっとカッコ良い俳優をあててやれよと…
(そんな外見のクセに矢鱈と強いのがインパクトはあるんですけど…)
オーソドックスなノリ故に序盤は冗長な展開が多く、尺が2時間弱と長めなので盛り上がるまでが結構退屈なのは難点といった感じですね。
中盤のヘルシング教授が登場した辺りからは割と盛り上がるのですが、全体的にもうちょっとテンポが良くても良かったかも?
ラストもちょっとアッサリしすぎで物足りなかったので、対決シーンとかはもうちょっと派手で見ごたえがあるような要素も欲しかったかなぁ…
アクションシーンとかも含めて全体的にちょっとスピーディーさに欠ける印象が強かったですし、そこまでゴシックホラー的な要素が強い作品でも無かったので、その辺はもうちょっと現代的なノリでも良かった気はしますよ。
総評としましては、良くも悪くも『古臭い雰囲気のオーソドックスなドラキュラ映画』って感じの作品ですね。
全体としては良くまとまっててそこそこ面白いのですが、現代に敢えてこの作品を見るほどの魅力があるかと言われると『ちょっと微妙なところ…』といった感じですね。
ダリオ・アルジェント監督らしさは特に感じられないのでアルジェント監督のファンって人にも薦めづらいですが、作品自体の出来は悪く無いですので『古い作風を意識したゴシックホラー的なノリのドラキュラ映画を敢えて観てみたい』というのであれば、チェックしてみても良い作品かもしれませんよ。