NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「トランセンデンス」(60点/サスペンス)

イメージ 1

■■■「トランセンデンス」■■■
(60点/サスペンス)

 人工知能の研究の権威であるキャスター夫妻は、ある日の講演の帰りに人工知能の開発に反対するテロ組織の襲撃を受け、夫のウィルが毒入りの銃弾で撃たれた事によって余命数週間の命と診断されてしまう。

 夫を何とか助けようとした妻のエヴリンは、研究中のスーパーコンピューター人工知能にウィルの意識を移植する事で、意識のみの存在として彼を救おうとする。

 果たして意識の移植には成功しウィルの人格はコンピューター上に再現されるが、全世界のネットワークに接続し恐るべき演算能力を得た彼は、たゆまなく進化を続けて人間を遥かに超越した神の如き力を手に入れていくのだった…



 スーパーコンピューターの上に意識を移植する事になった一人の男が、やがて人間を超越した強大な力を手に入れて人類の脅威となっていくという、SFものサスペンス映画。

 インセプション」や「ダークナイト」シリーズの製作スタッフによって作られたSFサスペンスという事で、雰囲気的には確かに「インセプション」とかと似ている部分のある作品ですが…
 割と鳴り物入りで宣伝されていた映画ですが、個人的には『うーん?』と言いたくなるような何とも釈然としない気持ちになるお話でしたよ。

 ストーリー的には、スーパーコンピューターに意識を移植された男がAI(人工知能)と融合する事で神のような力を身につけていき、やがて人類の脅威となっていく』みたいな展開なんですが、『人と機械との融合による変革と進化』を描いた典型的なサイバーパンクを題材としたSF作品ですね。

 コンピュータのAIと融合した主人公は果たして以前と同じ『人間』としての人格を持っているのか…みたいなノリがメインのサスペンスという感じで、夫を救った筈の妻が『今の夫は果たして以前の彼と同じなのか?』という事に疑惑を持つようになっていくというお話の流れは、なかなかSFサスペンスとしては面白いです。

 ただ『強大な人工知能である主人公』と『主人公が強力すぎる力を持つ事を止めようとする人類』の対立という感じの構図でメインのお話が進んでいくのですが、どうにもこの対立の構図がイマイチ宜しくない。

 サスペンスとして対立を描くのであれば、2つの勢力の両方にある程度の感情移入が出来ないとならないと思うのですが、人類側の行動原理が恐ろしいぐらいに身勝手で、相手を理解するそぶりすら見せずに物凄く一方的に主人公を抹殺しようと行動するので見ていて物凄くイライラします。
 (というか『凄い力を持ってきててヤバそうだからとりあえず殺しましょう』みたいなノリで、正直言って胸糞悪いです。)

 まあそれならば主人公に感情移入して観れば良いのでしょうが、お話の流れ上で人類視点で『AIである主人公の暴走を止める』というのがメインの展開のように描かれているので、ずっとモヤモヤしっぱなしになってしまうのは困りもの。
 (まあこの辺はネタの仕込みであるとも言えるんですけど…)

 またサイバーパンクSFでは『人間そのものを新たな段階への進化』みたいなのはかなりメジャーな題材なのですが、その辺があまりツッコまれずに単なる舞台装置的な扱いにしかなっていないのも残念すぎる印象。
 尺の都合もあるのでしょうが、その辺はもうちょっとテーマとして上手く処理して欲しかったですよ。

 オチに関しても『皮肉の効いたオチ』と言えなくは無いのでしょうが、とにかくスッキリしないオチで観終わった後に何のカタルシスも得られないのが辛いです。

 作品としてのアイデアは面白いですし、設定なんかも非常に好みな感じだっただけに、終始モヤモヤした気持ちの残るなんとも残念な印象の作品でしたよ…


 総評としましては、作品の設定や世界観やらは面白いのですがストーリーには全く納得が行かないという『何とも難儀な作品』といった感じの映画ですね。

 総じて良く出来ている部分も多いので、SFサスペンスとかが好きならば観ておいても損は無いとは思うのですが、観終わった後にどうにもスッキリしない気分になってしまう恐れがあるので、そういうのが苦手な人は要注意です。

 自分は最後までどうにもモヤっとした気持ちが残ってしまい、なんとも微妙な印象を受けてしまった一本でしたよ…