■■■「シアター・ナイトメア」■■■
(50点/サスペンス)
映画のデジタル化のあおりを受けて職を失ったフィルム映写技師のスチュアートは、今では映画館の売店の店員に身をやつして不満を抱きながら生活していた。
しかし、いままでの人生を映画にかけてきた彼は、映画に関わることを諦めきれずに、自分で筋書きを作ったホラー映画を撮影する事を決意。
レイトショーに訪れた若いカップルであるアリーとマーティンを映画館に閉じ込めて、アリーを薬で眠らせて拉致してしまう。
映画館のスクリーンに拘束されたアリーが映し出された事から彼女が誘拐された事を知ったマーティンは、誘拐犯であるスチュアートの要求する『筋書き』に従う事を余儀なくされるが、彼の要求は『1発だけ弾の入った拳銃を持ってある場所に向かえ』という奇妙なものだった…
映画に携わる事の出来なくなったフィルム技師が観客を監禁して『自分製作によるホラー映画』を撮ろうとするという、サスペンスホラー映画。
「エルム街の悪夢」のフレディ役のロバート・イングランド主演による作品という事で、もっとスラッシャー映画寄りの内容を勝手に予想していたのですが、意外と普通にサスペンス色の強い作品でした。
お話としては『レイトショーを観に来た若いカップルが犯人である映画館のスタッフに監禁されるんだけど、カップルの男の方が犯人の罠にハマって殺人犯に仕立て上げられ、ガールフレンドからも疑いの目で見られるようになってしまい…』みたいな流れで、犯人とカップルの男女を巻き込んだトリックと心理的な駆け引きがメインのお話という感じ。
犯人の本当の目的と事件に仕組まれた『筋書き』がなかなか読めないので、お話自体は先の読めないサスペンスとしてなかなか面白いです。
ただ登場人物が少ないうえに舞台が映画館の内部に限定されているため、駆け引きとなる要素が少なくて特殊なトリックも仕込めないせいで、盛り上がりに乏しくて山場となるシーンが殆ど無いのはどうにも物足りないところ。
せっかく『映画館』という舞台を準備しているんだから、もっと映画館ならではの仕掛けを使った殺人装置とかトリックとかを仕込んで欲しかったですよ。
(映画ネタで使われたのは『映画のリール装置とフィルムを使って犠牲者の首を絞める』って程度ですし…)
また犯人がただの老人で正面からやりあうと主人公が圧倒的に有利な事もあってか、そこまで追い詰められている雰囲気が無いせいで全体的に緊張感が薄いのも難点かと…
ストーリーも最後まで先が読めない展開なのは良いのですが、オチがちょっと中途半端で、どうにもモヤっとした気分になってしまうのは残念なところでしたよ。
ブラックなオチにするにせよカタルシスのある内容にするにせよ、もうちょっと振り切れた内容にした方が良かったんじゃないかなぁ?という感じ…
あと、ロバート・イングランドは相変わらず良い味を出しては居るのですが、本作では『人の良さそうなオッサン』を演じているシーンが殆どなので、ちょっと個性を活かし切れてない印象だったのが残念でした。
この人はもっとアクの強いキャラの方が向いていると思うので、もうちょっとしっかりと犯人のキャラを立てて欲しかったですよ…
総評としましては、お話やストーリーそのものは『そこそこ観れるレベル』なんですが、映画としては『どうにも物足りなさの残る作品』というのが正直なところ。
タイトルや予告編の雰囲気から、もっとホラー要素の強い内容を期待していたせいもあって『ちょっと肩透かしを食らった感じ』だったので、そういう方面に期待してる人は要注意です。
まあ、ツマんない訳でも無くて『可も不可も無いような内容』なので、サスペンス系の作品が好きで、気になっているのであれば暇つぶし程度にチェックしてみるのも良い作品かもしれませんよ。