■■■「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」■■■
(60点/サスペンス)
人間に擬態したエイリアンの彼女は、あまり身寄りの無さそうな男性を暗闇に誘い込み、闇に飲み込んで『捕食』するという活動を続けていた。
しかしそんなある日、彼女はとある事件をきっかけに人間的な感情を持つようになった彼女は、自分の存在に疑問を持つようになり人間の生活を真似て生きようと考えるようになる。
そして、旅先の田舎町でダフティという気の良い男性と出会った彼女は、彼の家へと転がり込んで暮らすようになるが…
人間を捕食するエイリアンの女性に『感情』が芽生えた事から思わぬトラブルへと発展していくという、SF風味のサスペンス映画。
タイトルや設定だけ聞くと「スピーシーズ」みたいなSFモンスターホラー的なノリを想像してしまいますが、内容的にはモンスター的な要素は全く無くて、いわゆる『雰囲気映画』に属するタイプの作品ですね。
主人公はエイリアンと言っても『モンスターっぽい姿』を晒すようなシーンは殆ど無く、『捕食』というのも獲物になる男性が『底なし沼のような闇に飲み込まれる』という表現だけでエグイ印象は全く受けません。
むしろこの捕食シーンの描写が美しくて、非常に印象的なのは表現として面白いですね。
作品の特徴は、とにかくストーリーや内容が『作中で言葉として一切語られない』という事。
設定やら世界観やらの説明が一切無くて、主人公が自分の心情を語る事も全くしない(というかセリフ自体が物凄く少ない)ため、お話の流れや心理描写を『画面の映像から汲み取らせる』という表現として徹底しているのは良い感じですね。
映像の雰囲気が非常に良く印象的なシーンも多いため、受け取り手によって色んな風にお話を読み解けたり、色んなメッセージを感じ取れたりするような構成なのは面白いと思います。
ただ雰囲気映画の宿命という感じではありますが、尺が長めで作品のテンポが遅めなので、全体的に冗長な作りなのは仕方の無い部分ではありますね。
雰囲気が良いのでそこまで退屈する事は無いと思うのですが、ハリウッド的な『テンポの良いサスペンス映画』を求めていると、ちょっとイライラしてしまうかもしれません。
また『お話を説明的なセリフで語らない』のは演出として良いと思うのですが、『語られ無さ過ぎて良く分からない部分』が多いのはちょっと難点かも?
ヒロインを追っかけてたっぽい、もう一人の『男性』も何者なのかサッパリ分からないままですし、途中で出てきた海岸のシーンやら畸形の男性もどうなったんだか良く分からなくて、なんかモヤっとした気分が残ってしまいましたよ。
まあ何となく雰囲気は掴める作りですし、その細かい部分が本編の重要な要素なのかと言われるとそうでも無いんでしょうが、『もうちょっと分かりやすい表現があっても良かったかなぁ?』という部分も多く感じました。
総評としましては、なかなか良い雰囲気だけど『ちょっと観る人を選ぶタイプの変り種な印象のSFサスペンス映画』って感じですね。
普通のサスペンス的な緊張感や面白さを期待していると肩透かしを食らわされるかもしれませんが、多くを語らないタイプの雰囲気映画とかが好きな人には非常に楽しめる作品だと思います
受け取り方で色々な見方が出来ると思う作品ですので、そういうノリが好きな人ならばチェックしておいても損は無いと思いますが、イキオイとか派手さとかは全く無い作品ですので、そっち方面に期待してる人は要注意です。