■■■「ザ・フューリー ~烈火の戦場~」■■■
(60点/アクション)
1945年の4月。
連合軍がベルリンを制圧した事によりヒットラーが自殺し、1週間後には戦争が終結する見通しで、アメリカ軍はドイツ軍の残党を掃討しつつ仲間の援護の任務を行っていた。
M18ヘルキャット駆逐戦車に乗る戦車隊のアトウッド軍曹は、近隣の町へと歩兵の援護へと向かうという任務を受けるが、道中で敵の残党である3両のIII号戦車の奇襲を受け、仲間を撃破されたうえに無線の不調で孤立してしまう。
彼らは不利な情況のなかで、後続の部隊を危険から守るためになんとかして窮地を乗り切ろうとするが…
終戦間際のドイツの片田舎でM18ヘルキャット駆逐戦車がドイツ軍の残党の奇襲を受けて窮地に陥るという、戦車ものの戦争アクション映画。
いかにもブラピの主演した戦車映画のようなタイトルが付いていますが、あちらは『M4シャーマン』が主役なのに対してこちらは『M18ヘルキャット』が主役と言う事で、大方の予想通りに中身の方は全く関係の無い作品です。
そもそもこちらは「SAINTS AND SOLDIERS: THE VOID」という原題で、どうやら「SAINTS AND SOLDIERS」というシリーズの3作目に当たる作品のようで、邦題を付けた人間が「フューリー」の『なんちゃって姉妹作品』みたいな雰囲気を狙ったのか『間違って借りていく人』が居るのを狙ったという感じでしょう…
(まあ『1両の戦車が仲間を守る為に不利な情況のなかで戦う』ってシチュエーションは確かに「フューリー」と似てなくも無いかも?)
ただ、なんちゃって続編っぽいタイトルにツッコミどころはあるものの、戦争映画としては意外と普通に良く出来た作品という印象。
お話としては『米軍の軽装甲の駆逐戦車が山道で敵の中戦車3両の奇襲を受けて孤立しつつも、なんとか後続の仲間のために命がけで戦おうとする』というような感じのストーリーなのですが…
装甲の薄い駆逐戦車で敵の中戦車3両を相手にするというシチュエーションから、キチンと作戦を立てて敵軍の不意をついて戦おうとする様子や、戦力不足を歩兵と連携して乗り切ろうとするという展開もミリタリー好き的にはなかなか面白いです。
登場人物のキャラクターも良く立っており、黒人の砲兵に差別意識を持った仲間たちが戦闘を通じて信頼し理解しあうようになっていくという人間ドラマ的な展開なんかも、描きたいテーマ性がはっきりとしていて良く出来ています。
ただいかんせん低予算映画らしく、戦闘シーンとかの迫力の無さは辛いところではありますね。
撮影には実際に現存するM14ヘルキャットやIII号戦車を用いて撮影が行われたようで戦車の映像は物凄くリアリティがある(実物なんだからあたりまえ)のですが、いかんせん展示用の戦車か何かを借りてきて使わせて貰っているせいか、戦車が異様にピカピカで汚れ一つ付いていないような状態なのは流石に違和感があります。
砲撃シーンや爆破シーンもCGを使っているようで合成にちょっと無理がありますし、実際の戦車を爆破できないせいもあってか映像に迫力がなくていま一つ地味で盛り上がりに欠けるんですよね…
また登場人物を掘り下げるために、あちこちで回想シーンが入ったりするのですが、わき道が多いせいでメインストーリーの展開が遅くて冗長に感じる部分があったのも残念なところかも?
総評としましては、色々と不満点もあるものの『戦争映画としては低予算ながらもそこそこ良く出来た作品』といった感じの一本ですね。
タイトルで中途半端にパクリっぽい感じになっているのがアレですが、ストーリーとかキャラの掘り下げとかが良く出来ているので、戦争ものが好きであればまあまあ楽しめる内容だと思います。
全体的にちょっと地味な映画なのでアクションシーンとかに期待をしてると肩透かしを食らうかもしれませんが、そうでなければまあまあ普通に楽しめる戦争映画ではないかと…