■■■「嗤う(わらう)分身」■■■
(60点/サスペンス)
弱気でこれといった取り柄も無く存在感の薄いサイモンは、上司にもバカにされて仕事も上手くいかず、会社の同僚のハナの事に気があるものの告白も出来ずに悶々とした日々を過ごしていた。
そんなある日、彼の会社に自分と瓜二つの外見を持つジェームズという男が入社してくる。
ジェームズは彼とは正反対に強気で快活な性格で、上司からの信頼も厚く入社してすぐに将来を期待されるような存在で、彼自身もジェームズと仲良くなっていくが、彼らの『瓜二つの外見』を利用したジェームズの身勝手で狡猾な行動によって、思いがけないトラブルへと巻き込まれていくのだった…
冴えない弱気な男の元に『自分とソックリの外見で正反対の性格のもう一人の自分』が現れた事によって数奇な運命に巻き込まれていくという、サスペンスホラー映画。
自分とは正反対の『もう一人の自分』をテーマとした作品ですが、リアルな誤解系や入れ替わり系のサスペンスじゃなくて、いわゆる『不条理系のサスペンス映画』って感じの作品ですね。
そもそもが雰囲気映画的なノリの作品なので設定やリアリティについてマジメに分析するような内容ではないですが、お話としてはなかなか良く出来ていて面白い映画だと思います。
お話としては『もともと存在感の薄い気弱な男が、突如として現れた『もう一人の自分』によってその存在すら奪われそうになる』という感じのストーリーで、敢えて言うならSFとかファンタジー的なテイストの感じられる内容。
作風もそういった内容を意識してか、レトロフューチャー的な美術デザインでディストピア的な世界観だったりと、どことなく「未来世紀ブラジル」を彷彿とさせるような雰囲気を漂わせているのですが…
まあどちらかというと、SFというよりは『自己との対峙』とか『自分自身との対話』みたいな内世界的なものを描いた、心理劇的な非常にテーマ性の強い作品という感じですね。
映画のストーリーについてあまり語ってしまうと、作品の解釈に先入観を与えてしまうかもしれませんので詳しくは書きませんが、やや難解ながらも作品のテーマとしては非常に分かりやすくストレートに楽しめる内容なのは良い感じ。
もともと雰囲気映画なので細かい設定やらストーリーの矛盾点とかにツッコミを入れだすとキリが無いですが、どことなく未来っぽいんだけどレトロな印象の世界観や美術デザインなんかは、理不尽な世界観とマッチして良い味を出しています。
また主人公と『もう一人の自分』が、見た目から服装までホントにソックリの外見なのに作品の中で混乱する事無く2人を見分けられるのは、『非常に上手い作りだなぁ…』とちょっと感心しましたよ。
ただお話のテーマやらアイデアやらは面白いと思うのですが、作品としてはちょっと冗長な部分もあり、特に主人公の煮え切らない態度やら『もう一人の自分』の狡猾な行動やらに終始イラっとさせられる感じなのは難点かも?
雰囲気映画的なノリにハマれれば非常に楽しめるとは思うのですが、スッキリと単純明快に楽しめるような内容ではないので、ちょっと人を選ぶ余地のある作品かもしれません…
総評としましては、独特の世界観やテイストの『なかなか良く出来た雰囲気映画的ノリのサスペンス映画』って感じの作品ですね。
ちょっとダークなノリやら不条理な世界観やらが好きな人であれば割と楽しめる映画だと思うので、そういうノリのサスペンスとかが好きならチェックしておいても損は無いと思います。
またディストピアSF的な雰囲気が好きでもそこそこ楽しめる要素のある作品なので、そっち方面に興味がある人にもそこそこオススメですよ。