NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ゼロの未来」(60点/サスペンス)

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■■■「ゼロの未来」■■■
(60点/サスペンス)

 未来世界。
 優秀だが神経質な性格で『電話を待つ』という事に異常に執着を持つプログラマーのコーエンは、会社の上司である『マネージメント』に自宅勤務の申請を行ったところ、「ゼロの定理」という非常に難解な数式を解くというプロジェクトに参画する事で自宅勤務を認められる事となる。

 自宅である寂れた教会に引きこもって数式の解析に臨むコーエンだったが、遅々として進まない難解な分析作業に疲れ果ててしまい、作業が行き詰ってしまう。

 そんな矢先、彼の同僚である青年のボブと、以前にパーティで出会った奇妙な魅力を持つ女性のペインズリーとが彼の元を訪れるようになり、彼らとの交流を通じてコーエンの人生は少しずつ変化していくのだった…



 「ゼロの定理」という非常に難解な数式の解明に挑む事となった男とその周辺の人間の辿る顛末を描いた、SF風味のサスペンス映画。

 未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアム監督による新作なのですが、ひと言で言ってしまうと絵とストーリーがポップになった「未来世紀ブラジル」って感じのお話ですね。

 管理社会的で退廃的でありながら、ポップアートのような派手な色使いやデザインでどこかユーモアを感じさせる未来世界の世界観やら、他人との付き合いが苦手でコミュ障で変人なんだけどどこか親しみを感じさせる主人公とかは、相変わらずのギリアム監督らしい凄いセンスでなかなかブッ飛んでいます。

 このギリアム監督の独特のセンスが好きならば、とりあえず映像の雰囲気やら世界観を楽しむためだけにでも、観ておく価値はある映画と言えるでしょう。

 ただストーリーの方も相変わらずのギリアムらしい内容で、ぶっちゃけ何が言いたいのか良くわかりません。

 お話のタイトルにもなっている「ゼロの定理」(おそらく宇宙の終焉の一形態であるビッグクランチの事?)に関しても、何で主人公たちが究明に躍起になっているのかも良く分からないですし(全てが消滅する事を証明する事で人生の無常感を現してる?)、割とキーになりそうな主人公のところにかかってきた『電話』の意味もいま一つ謎のまま…

 まあ、主人公を巡る友情の話やらラブストーリーやらは比較的分かりやすい内容にはなっているので、主人公の主観や人生観を中心として『人間の幸せとは何か?』みたいなものをテーマとして描いているのでしょうけど、それに関しても捕らえ方で色んな解釈が出来てしまう感じの物語なので相も変わらず難解って感じですよ。

 というか、自分には本作がラストで主人公たちがどうなったんだかサッパリ分からなかったんですけど、あれはハッピーエンドと解釈して良いものなの?


 総評としましては、『良くも悪くも非常にテリー・ギリアム監督らしい作品』といった感じの一本ですねぇ。
 『面白くてハイセンスだけど難解で何を言ってるのか良くわからない…』という、そんな感じの内容です。

 監督のファンならばオススメと言いたいところですが、惜しむらくは未来世紀ブラジル」とプロット的に似ている部分が非常に多いため、「未来世紀ブラジル」を見た人には作品的な目新しさが殆ど感じられないだろうという点は難点かなぁ?

 まあそれを差し引いても、この監督のブッ飛んだセンスは一見の価値がありますし総じて悪く無い出来の作品ではありますので、気になっているならばチェックしておいても損は無い一本だと思いますよ。