（５５点／モンスター：結構オススメ）
人類を怪物（ゾンビ）化させるウィルスの大流行から9年後。
ジャックは9歳の娘のルーと隣人のパトリックと共に、雪に閉ざされた『ハーモニー』という小さな町で、3人きりで怪物から身を隠しながらひっそりと暮らしていた。
かつては親友だったジャックとパトリックだったが、9年前のルーの母親が死ぬ原因となった事件の事から2人の間には深い確執があり、今は絶縁状態になっていたが、そんなある日、街に物資の補給に出たパトリックは街中で絶滅した筈の怪物と遭遇。
再び怪物が攻めてくる恐れがあると考えた彼は、ジャックと和解して一緒に怪物と戦おうとするが…
たった3人の家族だけが生き延びた雪に閉ざされた寂れた町をゾンビの群れが襲うという、モンスターホラー映画。
滅亡寸前の荒廃した世界で、わずかに生き延びた人たちが生き延びるために怪物と戦うという、「地球最後の男」みたいな感じの設定のモンスター映画ですね。
一応、ゾンビ映画というカテゴリーにしていますが、登場するモンスターは『9年のうちに突然変異で肉体が強化された代わりに感染力を失ったゾンビ』という設定なので、むしろグール（食屍鬼）という方がイメージに近いかも？
寂れた世界で殆ど３人しか登場人物が居ないという辺りからなんとなく予想が付くとは思うのですが、全体的に物凄く地味なお話ですね。
登場人物が恐ろしく少ないので相対的に登場する怪物の数も少ないですし、また雪の降りしきる無音の廃墟のような世界が舞台なので、ホントにビックリするほどに地味なんですよね。
それに加えて、特に序盤はお話がなかなか前に進まない事もあって、ちょっとイライラしてしまうかも？
ただ、その代わりに人間ドラマの部分は物凄く濃く描きこまれており最初は『何でこんな人類存亡の危機みたいな異常事態なのに２人は強硬な態度をとり続けてるんだ？』と不思議に思うような設定なのですが…
２人の男たちのドラマが描かれていくうちに『２人の過去に何があってここまでの確執が生まれたのか』とか『何故、彼らはこんな寂れた町で３人で暮らしているのか』とかって謎がちょっとづつ明らかになっていき、シッカリと腹に落ちるようなストーリーになっているのはなかなかに良い感じです。
全体的な雰囲気とか映像センスも良いですし、登場人物のキャラクターが非常にシッカリと魅力的に描かれているのも好感が持てますね。
また序盤～中盤は地味なシーンばかりなものの、終盤の展開はそこそこ盛り上がる感じですし、ラストなんかも結構熱い展開で面白かったのです。
ストーリーも『人間ドラマ』として観るとなかなか良く出来ていたので、最終的には『そこそこ密度が濃くて満足度のある作品』という印象に納まってるのは良い感じかも？
ただモンスター映画として観るとやっぱり物足りない要素も多く、いかんせん序盤の展開がスローテンポすぎて、本気で早送りしたくなるレベルで『何も起こらないシーン』が延々と続くので、もうちょっとその辺をテンポ良くまとめられてればなぁ…と感じてしまう作品でしたよ。
（全体の尺も２時間弱とモンスター映画にしては長めですし…）
総評としましては、全体的なスローペースとテンポの悪ささえ我慢できれば、『そこそこ良く出来たモンスターホラー映画風味のヒューマンドラマ』って感じの作品だと思います。
普通にゾンビ映画を求めてると色々と不満が多い内容ですが、雰囲気重視の親子ドラマとして観るなら結構良い感じの作品だと思いますので、シリアスなドラマ要素のあるゾンビ映画とかが好きな人ならば結構楽しめる一本ではないでしょうか？
物凄く地味で眠くなるような内容だしテイスト的にも人を選ぶ作品だと思いますが、個人的には結構オススメの一本ですよ。
