（６５点／オカルト：結構オススメ）
大学生のジェイは、ある日、街で知り合ったヒューと言う男性と仲良くなり一夜を共にする事となる。
しかし、セックスの後で唐突に薬で眠らされて椅子に拘束された彼女は、男性からこんな奇妙な説明を受ける。
自分は『あるもの』に感染させられた、これから『あるもの』が自分を追跡してきて、追いつかれたら殺されてしまうので逃げ続けなければならない。
『あるもの』は変幻自在に姿を変え、感染した人間にしか姿を見る事ができない。
『あるもの』は必ず歩いて追いかけてくるので、助かりたければ追いつかれる前に別の人間にそれを感染させる必要がある。
荒唐無稽な話だが、果たして彼女はその夜から『他人には姿の見えない正体不明の追跡者』に延々と追跡されるようになった事になり…
ゆっくりとだが延々と自分を追跡してくる『あるもの』に追い続けられる事となった少女が謎の怪物から逃れるために戦うという、オカルトサスペンス映画。
セックスによって感染して、延々と自分を殺すために追いかけてくる『あるもの』という、独自の都市伝説っぽい設定のモンスターが登場する作品です。
怪物は独自の創作モンスターだと思うのですが（犠牲者を延々と追跡してくるあたり、なんとなく都市伝説の『メリーさん』とかっぽい？）、この設定がなかなか独特で上手く怪物の個性と存在感を出していて非常に面白いです。
自在に姿を変える正体不明の『あるもの』に追いかけられ続けるという設定だけ聞くと、そこまで怖い映画じゃなさそうな気がするのですが、この他人には見えない『あるもの』の姿がとにかく不気味で気持ち悪い。
ある時は下着姿の老人だったり、ある時は尿を漏らし続ける女性だったり、寝巻の姿の不気味な大男だったりと、物凄く異様な姿で存在感がありすぎて、そりゃこんな異様な連中（何故か服を脱いでる（もしくは半脱ぎ）の事が多い）に夜討ち朝駆けで24時間追いかけて来られたら、誰でも精神がまいってしまうわ…という感じ。
とにかく、いつ現れるか分からない『あるもの』のプレッシャーが物凄くて、非常に緊張感があって恐いです。
お話としては、『ある男性から『あるもの』を感染（うつ）された少女が怪物の追跡から逃れるために、友人たちと協力して怪物について調べて戦おうとする』みたいな感じの流れなのですが、この『調査』のプロセスと主人公が徐々に精神的に追い詰められていくプロセスが、なかなか丁寧に描かれているのは良い感じ。
ちなみに『あるもの』はセックスで他人に感染す事ができるのですが、『感染した先の相手が殺されると遡ってきて次に自分が殺される』というなかなかに嫌らしいルールがあって、『一時的にでも他人に感染させて自分は助かろうとするべきなのか…』みたいな葛藤になっていたりと、サイコサスペンス的なノリもあったりするのが面白いですね。
というか、この『あるもの』ってセックスで感染するって設定のあたり、どうみても性病（というかAIDS）的なものの暗喩（メタファー）的な感じで、『無責任に相手に感染させる事』の恐怖が感じられて観ていて妙にリアルな怖さがあるんですよね…（まあAIDSは感染させても自分が助かる事は無いですけど…）
都市伝説をベースとしながら、この設定を考えた監督だか脚本家だかは（色んな意味で）非常に『良い趣味』をしてると思いますよ。
ただ、設定や雰囲気の怖さは非常に良くできた作品なのですが、難点を挙げるとしたら全体的に非常に地味な事でしょうか？
基本的に主人公が延々と『不気味な人影』に追いかけ続けられるだけのお話なので、そこまで派手な展開が多くなく見せ場があまり多くないんですよね。
サスペンスとしてのストーリーはなかなか面白くて終盤にはそれなりに見どころがあるものの、淡々としたシーンが多いのでちょっと退屈に感じてしまう人も居るかも？
あと全体的に非常にスッキリとしない感じの話なので、その辺は好みの分かれる部分かもしれません…
総評としましては、個性的なオリジナル設定の『なかなか良くできたオカルトサスペンス映画』って感じの一本ですね。
なんか設定だけ聞くとあんまり怖くないように感じる映画なのですが、実際に観てみるとこれがかなり怖くて面白い作品なので、設定の地味さで損をしている部分のある映画かも？
個人的には、近年のオリジナル設定の都市伝説もののオカルトホラーとしては出色の出来だと思うので、気になるのであれば是非ともチェックしておく事をオススメしますよ。
