NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「インサイド」(40点/サスペンス)

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■■■「インサイド」■■■
(40点/サスペンス)

 犯罪小説家であるカルロスは、レイプ犯に妻を殺害されたトラウマから作品を執筆する事ができなくなり、自宅で苦悩にうちひしがれながら毎日を無為に過ごす日々を送っていた。

 出版社はそんな彼に執筆を再開して貰うために、作家の卵であるカテリーナをアシスタントとして派遣。
 カテリーナは甲斐甲斐しく彼の面倒をみて何とかして彼の心を拓き執筆を再開させようとするが、カルロスは少しだけ心を拓いたカテリーナに対して、再び彼女を失う事を恐れるあまりに彼女を薬で眠らせて自宅に監禁してしまう。

 狂気に囚われた彼の行動に恐怖を感じたカテリーナは、なんとかして彼の下から脱出しようとするが…



 妻をレイプ犯に殺された作家が、トラウマに囚われて狂気に陥りアシスタントの女性を監禁しようとするという、スペイン製のサスペンススリラー映画。

 いわゆるこの手のジャンルでは良くあるタイプの監禁もののサスペンス映画ですが、欧州系の作品だけあってちょっと独特なノリのある作品ですね。

 単純な『監禁もの』という感じではなく、トラウマを抱えた犯人やらストックホルム症候群的な犯人とヒロインの恋愛関係的なドラマやらが加わった、ちょっとムーディでドロドロしたノリの作品という感じの内容です。

 ただ、そういった方向性の『犯人と被害者の奇妙な人間関係を描いた人間ドラマ的なサスペンスが作りたかったんだろうな…』というのはなんとなく分かるのですが、ぶっちゃけそれがあまり成功していない感じで、単に微妙な映画になってしまっているのは困りもの。

 何が微妙って、サスペンスなのに『お話の説得力が皆無』なんですよ。

 お話の流れとしては、『とある作家の家にアシスタントとして訪れた女性が作家によって薬で眠らされて、そのまま自宅に監禁されてしまう』みたいな感じの展開なのですが、とにかく序盤から説明不足&描写不足。

 お話のあらすじに『妻がレイプ犯に殺害された』という説明を書いていますが、序盤ではこの説明が無いままにいきなりヒロインが監禁されてしまうので、いきなり意味が分からずに面食らってしまいます。

 中盤辺りで一応はこの辺の設定が明かされて、作家がヒロインを監禁した理由として『実はそういう背景があった』というのが意外な展開として分かるのは良いのですが、そうだとしてもヒロインと作家に特に恋愛感情のようなものが芽生えるような描写が殆ど無い(むしろ勢いでセックスしちゃった程度の関係)ために『妻の代替品として監禁した』と言われても、全く説得力がありません。

 また、作家の住んでいる場所も『郊外の一軒家』とかならヒロインがこっそり監禁されてても納得いくのですが、作家の家が『近所の騒音がダダ漏れの安普請のアパート』という設定なので、『これってヒロインが本気になればいつでも助けが呼べるよね?』って感じで、これまた説得力皆無。

 ヒロインと作家の恋愛(同情?)みたいなものも少しだけ描かれるので、ストックホルム症候群的なノリで『監禁されているようでいて実は恋愛感情を持っていた』みたいな設定なのかと思いきや、そっち方面にも特に深くドラマが掘り下げられている訳でも無いので、これまた中途半端。

 色んな解釈が出来るものの、どの方向に対してもいま一つ納得がいかない中途半端っぷりで、全方位に対して隙の無い微妙っぷりを発揮しているのは困りものです。

 他にも設定とかに関しても非常に無駄な部分が多く、『ヒロインが糖尿病でインスリンの注射が必要』という設定があるのですがこれも特に活かされている訳でも無く、作家を疑って調査する刑事が登場するもののホントに『疑って調査するだけ』で事件の解決には1ミリも関わって来なかったりとか、何のためにあるんだか分からない設定やキャラが多すぎる…

 他にも、ラストでヒロインが作家のところから脱出するために『あるトリック』を使うシーンがあるんですが、それに関しても『このシーン、ほんとに必要あった?』って感じですし…

 なんか色々とやりたい事とかアイデアとかを詰め込もうとしたのは分かるんだけど、『もうちょっと整理して簡潔で説得力のある内容にしてくださいよ』と言いたくなるような、なんとも言えない気分になる映画でしたよ…


 総評としましては、やりたい事は分かるんだけど『いま一つ説得力の無い微妙な出来のサスペンス映画』という感じですね。

 まあ狙ってる方向性は分かりますし、全体的にもうちょっとシッカリと作られてればそこそこ面白い作品になったんじゃないかとは思うのですが、この内容では正直言って中途半端すぎてあんまりオススメできる要素は無いかなぁ…

 まあ、欧州系の独特のテイストのあるサスペンスが好きならば楽しめる部分もなくも無いかもしれませんので、そういうジャンルが好きで気になるならばお好みで…という感じでしょうか?