（６５点／サスペンス：結構オススメ）
ホラー好きの変わり者の少年マーティは、家に隠された母が過去に貰ったラブレターや父のポルノ雑誌といった家族の隠している秘密を密かに暴く事を楽しみにしていた。
そんなある日、彼は自分の兄がクローゼットの鞄の中に殺害した何者かの生首を隠している事を発見。
生首が定期的に入れ替わる事から、兄が連続殺人鬼である事を知る。
家族の『秘密』として生首の事を誰にも話さずにいた彼だったが、そんなある日、学校でいじめられている事を兄に告白したところ、数日後にバッグの中身が自分をいじめた同級生のものになっている事に気づく。
更にその時のミスによって兄に自分が生首の存在に気付いている事を知られてしまった事から、彼は兄に自分の命も狙われるのではないかと恐怖するが…
『兄が連続殺人鬼だと知ってしまった少年』と『自室に被害者の生首を隠し持つ兄』との奇妙な関わりを描いた、サスペンススリラー映画。
『家族の秘密を暴くのが趣味のホラー好きの少年』と『殺人鬼の兄』という尖った設定のお話ですが、設定以外にもなかなか独特の世界観と雰囲気のある面白い作品でしたよ。
お話としては、『いじめられっ子の少年が、兄がクローゼットに『生首』を隠している事を発見するんだけど、ある日、自分をいじめた同級生の生首がクローゼットに入っているのを発見、更に兄に自分がその秘密を知ったことに気づかれてしまい…』といったような感じの展開。
お話がアクマでも主人公の『少年』の目線で描かれており、想像力の豊かな少年が発見した『兄の秘密』やら、『ホラー好きな友人』やら『いじめっ子』という周辺の環境によって影響されていく少年の心情の変化といったものが、非常に丁寧に且つちょっと幻想的な感じで描かれています。
兄のアドバイスを受けていじめっ子にやり返すようになったりとか、ちょっと人間的な成長っぽい要素みたいなものも描かれていて、ホラーでありながら単なるサスペンスではなくて『人間ドラマ的なノリの作品』として作られているのが独特のセンスがあって面白いですね。
ただ逆に少年視点のドラマ要素が強いため、ホラー的な要素は若干弱めなのですが、途中で出てくる兄が殺人の参考にしたと思われる「ヘッドレス」というホラー映画の映像が、いかにも80年代のゴアホラーっぽくて矢鱈と悪趣味なうえに胸糞の悪い内容で、この『架空のホラー映画』によってゴア的な残虐シーンの需要を満たしてくれるという構成は、なかなかに捻りが効いてて良い感じ。
また少年の目線に立って『もしも兄が同じような行為を行っていたら』と感じる事で、想像の中で言いようのない恐怖を味わえるというドラマの構成も上手いです。
あとややネタバレになってしまいますが、終盤までは幻想的かつ人間ドラマ的なノリながらも、終盤で一気にホラーらしいエグい展開に突入していくという構成も、なかなかギャップがあってインパクトがありますね。
ただ面白い作りの作品だと思うのですが、人によっては非常に不快感を感じる部分もありそうですし、逆にオチにちょっと唐突感があるせいで物足りなさを感じる部分があるかもしれないのは気になるところかな？
個人的には、予想外の内容で予想以上に楽しめた『良い意味で予想を裏切られた作品』でしたよ。
総評としましては、なかなか『個性的で面白い作りのサスペンスホラー映画』って感じの作品ですね。
少年の成長ドラマとかダークファンタジー的なノリとか、独特のテイストが面白い作品なので、そういう方面に興味があればチェックしておいても良いかもしれません。
内容的に海外で高い評価を受けているのも納得なお話でしたので、気になるならば間違いなく観ておいて損は無いレベルの一本だと思いますよ。
