■■■「ザ・シェフ 悪魔のレシピ」■■■
(55点/サスペンス)
ロンドンのスラム街のような下町で父と共にケパブ屋を経営するサラールは、病気がちな父と、店員に因縁をふっかけてきたり店内でケンカしたりする質の悪い客やら、頼りにならない警察やらに苦労させられながらも、大学に通いながらなんとか店を運営していた。
しかしそんなある日、酒に酔ったチンピラに父が暴行を受けて、殺害されるという事件が発生。
遂に怒りの限界に達した彼は、客の一人を誤って事故で殺害してしまった事を契機に理性のタガが外れてしまい、街のクズどもを殺害してはケパブの材料にするという凶行に走り始めるのだった…
スラム街でケパブ屋を経営する一人の青年が父を殺され自分の夢を壊された復讐に街のクズどもを殺害しはじめるという、スラッシャーホラー映画。
イギリス製のスラッシャーホラー映画でタイトルだけ見るとグロ系のお馬鹿映画っぽい感じなのですが、実際の中身の方は割と独特のノリを持った重めの作品です。
お話としては、『ある青年がスラム街で父親とともにケパブ屋を経営してるんだけど、父親がチンピラに殺された上に自分の夢まで奪われた事から、復讐のためにチンピラどもを殺害してケパブの材料にする』みたいな感じの内容。
『人肉ケパブ』という設定だけ聞くと、グロ要素がウリのブラックユーモア系のスラッシャーホラーのように感じますが、どちらかというとヘビーでシリアスな感じの話でスラム街の闇の部分とか移民問題とか重めの要素がテーマとなっている印象ですね。
まあネタのとおりに人体解体のシーンとかもあり、そこそこグロ要素も強めの内容ではあるのですが、殺害シーンとかが割と淡々としてて『虐殺』というより『調理』をしている感じでそこまでグロ映画としてはキツくない印象。
どちらかというとスラム街を舞台とした『クライムサスペンス』的なノリが強くて、特に中盤あたりからはホラー要素よりもサスペンスの要素の方がグッと強くなって、一筋縄では行かない先の読めない展開に突入していくのは面白いです。
本作の特徴は『殺されるクズどもが揃いも揃ってキチ●イみたいな連中ばかり』だという事。
『そりゃ、こんな客が毎日のように店に来てたら主人公じゃなくてもブチ切れるわ』って感じでキチ●イっぷりで、主人公が殺人鬼と化しても不快に感じないのは良いですね。
またサスペンス展開に突入してからも、主人公のキャラの掘り下げとかが良く出来ているため犯罪ドラマとして普通に楽しめるのも良い感じです。
ただ、尺が2時間ぐらいとこの手の映画にしては結構長めで、中盤辺りがちょっとダラダラしすぎでテンポの悪さを感じでしまうのは難点かなぁ?
あと残虐シーンも特に効果的に使われてる訳でも無いので、スラッシャーホラーとして見るとちょっと中途半端な印象になってしまっているのも残念なところ。
ラストのもの哀しいながらもカタルシスのあるオチとかは悪くないですし、そこそこ良く出来ている部分も多いので、もうちょっと全体的にお話がテンポ良くシェイプアップされてた方が良かったかも…
あと本編の出来とは関係ないのですが、主人公が犠牲者を殺してミンチの材料にする時に『いやいや、死体はもうちょっと血抜きしないで良いんか?』とかどうでもいい事が物凄く気になったのは自分だけですかね…
(ケパブにする肉はそういう事を気にしなくて良いのかしらん…というかケパブってミンチから作るものなの?)
総評としましては、物足りない部分もあるものの『なかなか個性的で面白い切り口のスラッシャーホラー映画』って感じの作品ですね。
スラッシャーホラーよりもクライムサスペンス系の作品が好きな人の方が楽しみやすい内容だと思うので、そういう系列の映画が好きであれば割とオススメできる一本だと言えるでしょう。
強くプッシュするほどでは無いもののそれなりに見どころのある内容ですので、気になるならばチェックしておいても損は無い映画だと思いますよ。