■■■「ロジャー・コーマン デス・レース 2050」■■■
(65点/アクション:結構オススメ)
近未来のアメリカ。
巨大企業によって実質支配される事となり発展を向かえたその世界は、『増え続ける高齢者の問題』や『AIによる労働力の提供による失業問題』が顕在化し、その不満を抑えるために暴力的なエンタテイメントが大流行。
なかでも人気となるイベントは「デス・レース」で、アメリカを武装したレースカーによって横断し、その間にいかにたくさんの歩行者を轢き殺したかによって勝利が競われるという残酷なもので、その様子は全国にVRシステムを使って中継されて全米が熱狂する一大イベントとなっていた。
そして今年も「デス・レース」がいよいよ開催される事となるが、大衆の絶大な支持を得る現チャンピオンである『フランケンシュタイン』のパートナーとなる女性は、実はレースを妨害するために送り込まれたレジスタンスのスパイで…
アメリカ大陸を横断しながらひたすら殺戮を行う事によってポイントを競うという「デス・レース」の様子を描いた、近未来ものバイオレンスアクション映画。
ロジャー・コーマン製作の「デス・レース2000年」という、カルト的な人気を誇るB級アクション映画のリメイクに当たる作品なのですが…
「デス・レース」というとジェイソン・ステイサムの主演で少し前にリメイクされていましたが、正直「デス・レース2000年」のリメイクかと言われると微妙な出来だった(まあ映画そのものは割と面白かったけど)のですが、本作はそちらのなんちゃってリメイクとは異なるロジャー・コーマン監督によるガチのリメイク作品となります。
お話としては、基本的な設定はオリジナル版とほぼ同様に『大陸を横断しつつ人を殺せば殺す程にポイントとなるという狂った殺人エンタテイメント』の大会の様子を描いたというただそれだけの作品なのですが、あいかわらず狂った世界観が非常に良い味を出しています。
マンガのような派手なデザインの殺人レースカーで、やたらと濃いドライバーたちが殺人レースを争うというノリの馬鹿馬鹿しさはオリジナル版と同様で、レーサーの熱狂的なファンが轢かれるために道に並んでみたり、口減らしのために障害を持った子供の車いすを道路に並べる鬼畜親たちが登場したりと、矢鱈とブラックなノリも健在。
その中継に全米が熱狂する様子もオリジナル版以上にシッカリと描かれていて、社会風刺ネタとしてはより濃くなった印象で、『よくこの作品をオリジナル版にガチでリメイク出来たなぁ…』と感心するレベル。
(あちこちからクレームが付きまくってそう。)
特撮なんかもあいかわらずB級レベルではあるもののCGとかも多用したそこそこ気合の入った内容にはなっており、オリジナル版の圧倒的な低予算感に比べると『普通のアクション映画』として楽しめるレベルまでレベルアップしているのは良い感じです。
他にも、レジスタンスが積極的に攻撃してくる(レジスタンスというより「マッドマックス」のヒャッハーな人たちのようなノリ)ようになってたり、民間人が武装してて反撃してきたりと、総じてオリジナル版よりも派手な内容になっており、その辺りは現代風に上手く焼き直されている感じ…(逆にお色気シーンは減量された印象?)
ともあれ相変わらず非常にテンポが良くて、退屈しない作りになっているのは上手いです。
また、レースの様子がVRで中継されていたり、出場レーサーのなかにコンピュータ制御による『AIカー』が登場したりするのも、いかにも現代的で面白いですね。
全体的に『オリジナル版を順当にパワーアップさせて現代的に焼き直した作品』という感じで、馬鹿馬鹿しさと頭の悪さは健在なのが嬉しいところです。
ただ、オリジナル版と比べると不満点もいくつかあって、特に主人公のキャラクターの設定が改変されてしまったのは残念なところ。
(個人的にオリジナル版の『自分は〇人目だから』みたいな設定が好きだったので…)
主人公のライバルキャラに関しても、オリジナル版のスタローンのやってたキャラの方が濃くて好きだったかなぁ?
他のドライバーはリメイク版の方が面白いキャラになった印象なんだけど、AIカーにはもうちょっと活躍して欲しかったかも?
あと上手く言えないのですが、『映像のショボ』さと『馬鹿馬鹿しさ』や『頭の悪さ』の絶妙なバランスという点で、『バカ映画』としてはオリジナル版の方が完成されてる印象なんですよね。(まあ思い出補正かもしれませんが…)
リメイク版では映像に中途半端に予算がかかっている分、ちょっとマジメな雰囲気になってしまった感じなので、むしろもうちょっとショボくても良かったんじゃないかと…(笑)
総評としましては、思ったよりも良く出来た正統なリメイク作品であり、同時に『大マジメに作られた新作アクションものおバカ映画』という印象。
オリジナル版が好きだった人にも普通にオススメできる良リメイク作品ですし、オリジナルを知らない人にも十分に楽しめるお馬鹿エンタテイメントとなっている感じなので、バカ映画が好きならば普通にオススメできる作品だと言えるでしょう。
特にポール・W.S.アンダーソン版の方の「デス・レース」に不満を抱いていた人には十分に満足できる作品になっていると思うので、気になるならばチェックしておいて損は無い一本だと思いますよ。