■■■「エンド・オブ・トンネル」■■■
(70点/サスペンス:オススメ)
ブエノスアイレスに住むホアキンは、事故で娘と妻を失い自分自身も車椅子で生活するようになった事から、心に深い傷を負って世捨て人のような生活を送っていたが、定職に就かず生活費に困った彼は、収入を得るために自宅の2階の空き室を貸し出す事となる。
空き室の住人としてストリッパーのベルタとその娘のベティを受け入れる事となった彼は、最初は厚かましい住人の態度に辟易とさせられていたものの、一緒に暮らすうちに彼女たちに心の傷を癒され徐々に心を開いていく。
そんなある日、地下室で奇妙な物音と話し声を聞いた彼が不審に思って原因を調べてみたところ、強盗たちが銀行を襲撃するために自宅の更に地下にトンネルを掘っている事が判明し…
ストリッパーの母娘と一緒に暮らす事になった車椅子の男性が、自宅の地下に強盗がトンネルを掘って銀行を襲撃しようという計画を立てている事を偶然にも知ってしまう…という、サスペンススリラー映画。
『偶然にも強盗の銀行襲撃計画を知る事となってしまった男性が、予期せぬ形で事態に巻き込まれていく』という、いわゆるクライムサスペンス系のお話なのですが、こいつがなかなか予想外に良く出来た作品でしたよ。
お話としては、メインとして『心に傷を負った男性ととある母娘の人間ドラマ』的な要素と、『銀行強盗たちの銀行襲撃計画』という2つの要素が同時に進行していくのですが、この2つの要素が予想外の形で絡み合って思いがけないサスペンスドラマへと展開していくという流れがなかなか面白いです。
詳しく書くとネタバレになってしまうので内容についてはあまり書きませんが、最初は強盗の計画を目撃して阻止しようとしていた主人公が、徐々に『単なる第三者』では無い形で事件に関わる事になっていくという設定が非常に良く出来ている印象。
また序盤の主人公が『単に盗み見しているだけ』のようなシーンでも、強盗同士の内ゲバとかがあったりして、クライムサスペンス映画として緊張感があり退屈しないように考えて作られているのもなかなか面白いです。
また、そういったお話の序盤で出てきた何気ない設定が、後半や終盤で思いがけない形で伏線として登場したりする辺りも良く出来ており、非常に無駄がなく良く練られたプロットに感心させられました。
ストーリー展開に関しても、二転三転と予想外の方向に次々とお話が転がっていき、最後まで全く先が読めない感じの構成なのも良く出来ています。
加えて、主人公とストリッパーの母娘を中心とした人間ドラマの部分もキチンと作られており、主人公とヒロインのキャラクターが非常に魅力的にシッカリと掘り下げられているのも好感が持てる印象ですね。
ただ観ていて気になった部分を挙げるとしたら、主人公の『車椅子』の設定が殆ど本編に活かされてないという事かなぁ?
主人公が半身不随で車椅子で生活をしているという辺りから、そういったハンディキャップがサスペンス要素に活かされているのかと思いきや、本編の中でそれらしい要素は殆どなし。
正直、『この設定って別に無くても良かったんじゃない?』とツッコミを入れたくなるレベルでしたので、パッケージにデカデカと車椅子の主人公がフィーチャーされてる割には、なんか肩透かしだったかなぁ…という印象。
またお話が2時間強と全体的に長めな事もあって、ちょっとだけテンポの悪さを感じたのも気になったところかな?
とりわけて退屈するような部分も無いのですが、序盤~中盤にかけてはメインのストーリーがなかなか進まないので、ちょっと冗長に感じる部分がありました。
終盤のお話が大きく動き出してからの展開は、先が全く予想出来ない感じで非常にテンポが良かったので、全体的にもうちょっとシェイプした作りでも良かったかも?
あと、本作は主人公の経歴とかが一切不明(作中で語られない)なのですが、何故か色んな事にたいして矢鱈と有能で『おまえいったい何者だよ?』とツッコミを入れたくなったのは自分だけでしょうか?
(ラノベのオレツエー系の主人公かよって感じ…(笑))
総評としましては、全く期待していなかった割には『予想外に良く出来たクライムサスペンス映画』という感じの作品でしたよ。
この手のクライムサスペンス系の映画が好きであれば、ほぼ間違いなく楽しめる作品だと思いますので、気になるようであればチェックしておいて損は無い一本だと言えるでしょう。
二転三転する先の読めない系のサスペンス映画を求めているのであれば、素直にオススメできる映画だと思いますよよ。