いじめられっ子の内気な少年のビルは、数年前の大雨の日に一人で外に遊びに行かせた弟が行方不明になってしまってから、そのトラウマから立ち直れずに未だに弟の死を受け入れられずにいた。
その頃、町では原因不明の子供の失踪事件が相次いで発生していたが、そんなある日に、彼は地下室で行方不明になったはずの弟の姿と共に現れた『それ(IT)』を目撃し、とてつもない恐怖を味合わされる。
自分以外にも、自分の観た『それ』と同じものを友人たちが目撃している事を知った彼は、なんとかして『それ』の正体を暴いて弟を取り戻せないかと考えるようになるが…
*
劇場にて「IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」を観てまいりました。
1990年に作られたキング原作のホラー小説のTV映画化作品で、傑作と名高い「IT(イット)」のリメイクに当たる作品ですが、予想以上になかなか良く作られたリメイク作品でしたよ。
リメイクといっても旧作とは結構違う感じの内容で、観ていて所々で『ああ、こんなシーンあったなぁ』と思い出す感じなのですが、むしろ『あれ、こんな話だったっけ?』と思うような部分も多くて、良く似た設定の別の作品と思って楽しんだ方が良いレベルかも?
何が一番違うって、旧作では『大人になった主人公が過去を回想する』という形がお話が進んでいたと思うのですが、本作はストーリーに『少年時代の主人公たち』しか登場しないので、青春ドラマ的なテイストが更に強くなっている事ですね。
そのお陰で、旧作以上に『オカルト版スタンド・バイ・ミー』みたいな雰囲気の作品になっています。
ちなみに自分は不勉強ながら「IT」の原作は読んでいないので、どちらの展開が原作に忠実なのかは良く分からないのですが、なんとなく新作はキャラの掘り下げが薄めで旧作の方が全体的にキャラの掘り下げとかがシッカリしていて『キングらしい雰囲気』を良く再現しているような気がしました。
まあ、もともとが『キャラクター描写の物凄く尺を割くキング原作のドチャクソ長い小説』を映像化したものなので、どうしても掘り下げが薄くなってしまうのは致し方ない部分ではあるとは思います。
ただ掘り下げが薄くなった代わりに、単純にエンタテイメントとしては新作の方が簡潔で分かりやすくて観やすいお話になっている印象。
オカルトサスペンスらしい謎解きやら、キャラクターの背景やらを、非常にうまい具合に尺の中に詰め込んで一本のお話としてキレイにまとめています。
(といっても130分を超える尺になってしまっているので、ホラー映画としては割と長めですけど…)
(といっても130分を超える尺になってしまっているので、ホラー映画としては割と長めですけど…)
旧作を知らない人間が観る事を想定するなら、オカルトとしての謎の提示やら謎解き要素も良く出来ていますし、少年たちの青春ドラマとしても不足のない程度にはストーリーが描かれていますし、『少年たちの成長と友情が描かれた青春もの風味のオカルト映画』として十分に楽しめるレベルに仕上がっていると言えるでしょう。
個人的には、特にラストの展開の熱さやら分かりやすさは旧作よりも新作の方が良く出来てると感じたので、その辺はこっちの方が好きかもしれません。
ただ逆にイマイチになってしまった部分としては、『ペニーワイズの怖さ』が旧作に比べると減少してしまった事かなぁ?
全体的に尺を削った弊害なのかもしれませんが、特に序盤~中盤までのペニーワイズの存在感が薄くて、いま一つ『主人公たちの感じる怖さ』が伝わって来ないのは困りもの。
また、今回のペニーワイズは旧作に比べると矢鱈と凶暴そうで『殺る気まんまんの殺人鬼』みたいな雰囲気かもしを出しているのですが、逆に凶暴であるがゆえに『人間臭さ』が感じられてしまい、旧作のペニーワイズに比べると話が通じそうな印象を受けてしまうんですよね。
正直、ペニーワイズに関しては旧作の『何を考えてるのか全く分からない異質な存在』の雰囲気の方が怖かったので、その辺は旧作のテイストを踏襲して欲しかったかなぁ?
(まあラスト辺りの展開を考えると、新作では『凶暴なペニーワイズ』の方が相応しいのかもしれませんが…)
(まあラスト辺りの展開を考えると、新作では『凶暴なペニーワイズ』の方が相応しいのかもしれませんが…)
総評としましては、普通に良く出来た『青春ものオカルトホラー映画』という感じの作品です。
旧作を観ていたとしても『かなりノリが違う作品』になっているので、別作品のようなノリで楽しめる内容ですし、旧作を全く知らない場合は普通にオカルトホラーとして楽しめる内容だと思いますよ。
そんな感じなので、旧作を観てたとしても観てなかったとしても、オカルト映画が好きで気になっているのであれば普通にチェックしておいて損は無い一本ではないでしょうか?