NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「GHOUL グール」(60点/オカルト:結構オススメ)

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■■■「GHOUL グール」■■■
(60点/オカルト:結構オススメ)

 1932年、ウクライナでは『ホロドモール』と呼ばれる大飢饉が発生し700万人が命を落とし、多くの人が人肉を食べる事で飢えをしのいだと言われている。

 『食人』をテーマにしたドキュメンタリー番組を作る事になったアメリカ人のジェニーらの3人は、過去に知人を殺害してその肉を食べた事で逮捕されたという、ボリスという男性にインタビューを行うために、ウクライナの片田舎の村へと訪れる。

 実際に事件があったという廃墟となった小屋でインタビューを行う事になった彼らは、地元のガイドや霊能者たちと共にその廃墟に泊まり込む事となるが、キッチンのテーブルに『降霊板』の模様が刻まれているのを発見した彼らは、番組を盛り上げる降霊の実験を行う事になる。

 しかしそれ以降、彼らの周りで行った記憶の無い行動や撮った記憶の無い映像がビデオに録画されていたりといった、奇妙な現象が起こるようになり…



 『食人』をテーマにドキュメンタリー番組を作る事になった若者たちが、実際に『食人』による殺人事件があった廃墟で過ごすうちに恐るべき事態に巻き込まれていく…という、オカルトホラー映画。

 ロブ・コーエン製作による、いわゆるPOVタイプのモキュメンタリー映画で、低予算映画としては割とありがちなジャンルとか方向性の作品ですが、なかなかにコレが低予算のB級映画としては良く出来た作品でした。

 お話としては『食人をテーマにドキュメンタリーフィルムを撮ろうとした3人の若者たちが、実際に食人よる殺人事件があった場所で番組を撮影しようとしたところ恐ろしい出来事に巻き込まれていく…』みたいな感じのお話で、ノリとしては「グレイヴ・エンカウンターズ」とかと同系列の『お化け屋敷もの』っぽい作りのPOV作品です。

 単純に殺人事件を題材にするだけじゃなくて、過去にウクライナであった『ホロドモール』と呼ばれる歴史的な大飢饉を題材にしていたりして、作品に不気味な雰囲気とリアリティを持たせているのはなかなか上手いですね。

 ただ歴史的な事件をベースとしている割には、お話自体は『番組を盛り上げるために降霊の実験をやってみたら心霊現象が起こるようになった』という妙に安っぽいプロットなのは、ちょっと残念なところ。
 (もうちょっと『ホロドモール』そのものをストーリーに絡ませても良かったと思う…)

 お話の流れとしては、廃墟で起こる奇妙な現象の原因を探っていくうちに、過去にこの場所であった殺人事件や『呼び出された霊』の正体が徐々に明らかになっていく…みたいなオーソドックスなオカルトサスペンス的な展開。

 しかしオーソドックスな作りながらも、ウクライナの田舎町で自分たちこそが異邦人であるという『異世界』的なテイストやら、メインの舞台となる『廃墟』や『地下道』の不気味な雰囲気やらが良く出ていて、全体的になかなか良い感じのテイストをかもし出しています。

 また中盤まではそうでもないものの、終盤の展開のスピード感とか緊張感が非常に良く出来ており、特にラスト付近の先の読めなさに加えて全く救いの無さそうな絶望感は、こういったPOV系のモキュメンタリー作品の中でも特筆すべきレベルではないかと…

 ただ前の文章でも少し触れましたが、中盤までの展開はちょっとテンポが悪くお話が『事件の真相』になかなか近づかない事もあって、ちょっとダレ気味な部分があるのは残念なところ。

 また、オカルトもののPOVでお約束の『夜の森の中をカメラを持って走るシーン』が結構長くて、本作でもご多分に漏れずに『何をやってるんだか良く分からない』シーンになってしまっているのは勘弁して欲しかったです。

 この手のシーンって色んなPOVで出てくる割には、映像表現を工夫して観やすくしている作品って殆ど無いので、出てくるたびに『もうちょっとどうにかならんものか?』と思いますよ。


 総評としましては、やや物足りない部分もあるものの『なかなか良く出来た幽霊屋敷系POVホラー映画』って感じの作品ですね。

 いわゆるPOV形式のオカルトホラーの中では完成度の高い類だと思うので、この手の作品とかが好きな人であれば、チェックしておいても損は無いのではないかと思います。

 パッケージによるとチェコで大ヒットしたホラー映画だそうですが、確かに『ヒットしただけの事はある』と思わせる程度には見どころのある作品でしたので、まあまあオススメの一本という感じでしたよ。