■■■「フッテージ ~惨劇までの13日間~」■■■
(60点/オカルト)
映画のプロデューサーであるデレクは、新作の3D撮影されたファウンドフッテージ映画である『死の悪霊』を撮影するために、カメラマンであり弟のマークや、主演女優で元妻のエイミーらとともに田舎町の山小屋に訪れる。
その場所はかつて住人が発狂して妻を殺害し、その死体を裏の湖に捨てたという恐ろしいいわくのある場所だった。
スタッフたちは、デレクとエイミーのギスギスしたムードに不安を感じつつも撮影を開始するが、やがて彼らの周りで『撮影のための仕込み』とは異なる奇妙な現象が起こり始め…
いわく付きの山小屋にファウンド・フッテージ・ホラー映画を撮影に向かったスタッフたちが、実際にその場所で恐ろしい現象に遭遇するという、なんちゃって実録映画風のファウンド・フッテージ・ホラー映画。
タイトルどおりに、「ブレアウィッチプロジェクト」等でお馴染みのファウンド・フッテージ(発見されたフィルム)タイプのオカルトホラー映画なのですが、主人公たちが『ファウンド・フッテージ映画を作っている側の撮影スタッフ』という設定なのはなかなか面白いですね。
ちなみに作中では『3D映像を使った斬新なファウンドフッテージ映画を撮る』とかって設定になっているのですが、もしかしたら本編の方ももともとは3D映像で公開されたものなのかしらん?(まあ映画を観た感じ3D映像のメリットは殆ど無かったので、3Dで観れなくてもあまり問題は無さそうですけど…)
とはいえ『ホラー映画の撮影スタッフ』が主人公のファウンドフッテージ映画なんて既に山ほどあるわけですが、本作の面白いところはメタ的な視点が取り入れられた『非常に設定に凝った作品』だと言う事。
ファウンドフッテージ映画への皮肉とかブラックユーモアが非常に効いており、主人公が『世の中のファウンドフッテージ映画はクソばかりだ』と言い放ってみたり、この手の作品のお約束である『ヤラセインタビュー』の撮影の様子やら、『現場で起こる怪奇現象』のネタの仕込みに言及してみたり、挙句には『ネタ出しの会議』やら『作品を売るための宣伝の手法』に言及してみたり…
といった感じで、『裏話的なネタ』から始まって『B級ホラーの視聴者が常々感じているようなツッコミどころ』まで、メタフィクション的なホラーのパロディ演出が大量に仕込まれていて、その手の映画のファンであればニヤリとさせられるような作りになっているのは面白いです。
脚本もなかなか凝っており、舞台の背景やら主人公とヒロインの『関係』が彼らが撮影する映画と現実でリンクしており、それに連動するような形で異常現象が起こっていくという展開は良く出来ています。
また、登場人物たちのキャラクターもシッカリと描き込まれており、ドラマとしても普通に楽しめる内容になってるのは良いですね。
(ファウンドフッテージ映画では、こういうドラマ部分はないがしろにされるパターンが多いので…)
あと感心させられたのは、作中で主人公たちによって触れられる『ファウンドフッテージ映画の脚本の問題点』(『怪物に追いかけられているのに、何でカメラで撮影しながら逃げるのか』とか『怪物の正体は明かすべきか?』とか…)が本作中では見事にすべて解決されているのは感心させられました。
そういう部分も含めて、全体的に非常に良く練られた脚本だと思いました。
ただお話は面白いのですが、本作がホラー映画として怖いかと言われると微妙なところなのは困りもの。
ブラックユーモア的なパロディ要素やら人間ドラマとしては面白いのですが、特に前半部分のホラー要素が薄すぎでどうにも冗長な部分が多いです。
マトモに事件が動き始めるのがかなり終盤になってからだし、動き始めてからは逆にちょっと急展開すぎて、ホラーとしての盛り上がりが薄く感じるのも残念なところ。
もうちょっとホラー要素に尺を割いて、そういう部分もシッカリ作りこんで欲しかったというのが正直なところですよ。
オチはまあお約束ながらも『怪物』の正体もちょっと安っぽいですし、何かもうひと捻りあっても良かったかなぁ?
総評としましては、不満要素も無くはないものの『なかなか良く出来たファウンド・フッテージ・ホラー映画』という感じの作品ですね。
むしろ『ファウンド・フッテージ・ホラー映画を皮肉ったパロディ』としての部分が面白いので、ファウンド・フッテージ・ホラー映画とか実録系ホラーが好きな人であれば逆の意味でなかなか楽しめる一本になっている印象。
その手の映画が好きであれば色んな意味で見どころのある内容だと思うので、設定やらノリやらが気になる人には結構オススメという感じですよ。