■■■「Z Inc. ゼット・インク」■■■
(65点/アクション:結構オススメ)
アメリカを中心に全世界で「ID7ウィルス」と呼ばれる新種のウィルスが発生。
このウィルスは、一時的に人間のストレスホルモンの濃度を上げて感情と理性のバランスを狂わせ、感情や本能を剥き出しにさせて暴走させるという恐るべきもので、政府はウィルス感染者による相次ぐ暴力事件に苦慮しつつも、なんとか隔離に成功していた。
そんなある日、ブラックな法律事務所に勤める弁護士のデレクは、同僚と上司にハメられ、とある仕事のミスを押し付けられてクビを言い渡されるが、時を同じくして社内でID7ウィルスによるパンデミックが発生。
社屋全体が8時間の隔離状態に置かれる事になってしまう。
『ID7ウィルスの感染中に起こった傷害事件や殺人事件は、ウィルスの影響として裁判で無罪にされる』と知っていた彼は、自分をハメた同僚と上司に復讐を計画し、大混乱状態のビルの最上階を目指して行動を開始するが…
人間の理性を失わせて本能と感情をむき出しにさせるという「ID7ウィルス」のパンデミックが発生したブラック企業の社内で、クビにされた男が上司と同僚に復讐を企てる…というバイオレンスアクション映画。
「Z Inc.」とかってゾンビ映画っぽいタイトルが付いていますが、実際の中身の方はゾンビぽい要素は特に無くていわゆるバイオレンスアクション系のサスペンス映画ですね。
まあ、ウィルスの特徴が「28日後....」とかと似ているので、そういうタイトルを付けたくなる気持ち分からなくは無いですが…ちなみに原題は「MAYHEM」(大混乱)と直球ストレートなタイトルです。
お話としては、『とあるブラック企業に勤める弁護士の男が同僚と上司にハメられてクビを言い渡されるんだけど、人間の理性を失わせるID7ウィルスのパンデミックに乗じて自分をハメた相手に復讐しようとする』みたいな感じのお話。
『ウィルス感染で理性を失った社員によって大混乱が生じた社内で、最上階を目指して突破していく』みたいな感じの展開で、ノリとしてはバトルロワイアル的な要素が強い内容ですね。
設定がなかなか練られて考えられており、主人公たちが『ウィルスの感染で理性は失ってるけど知性は残っている』みたいな状態のため、暴力や乱闘にためらいが無く、自責の念やモラルで悩むような事も無いので、とにかく色んな意味で『話が早い』状態です。
また、主人公が命を狙う相手も自分をハメたクズ上司やその同僚といった感じで、観ていて『非常にムカつく連中』なのに加えて、良い感じで『ブラック企業批判』的なネタも仕込まれており、視聴者側もあまりモラルや罪の意識を感じずに作品が楽しめる作りになっているのも良い感じですね。
作品のアイデアや脚本も含めて、なかなかに良く練られたシナリオや設定だと思います。
演出としても、同僚が中ボス、上司がラスボスみたいな描かれ方で、加えて『上司の差し向けた用心棒』みたいなキャラも登場したりと、全体的にゲームでも攻略しているようなメリハリが効いた展開になっているのも良い感じです。
常に『大混乱』状態の社内の様子やら、工具を手に大暴れする主人公たちといったビジュアルも面白くて、とにかく観ていて退屈しません。
ただ、ウィルス感染という事で色々と設定をブッ飛ばしてるだけあって、基本的にストーリーに深みは無くてイキオイだけのノリになっているのは難点と言えば難点かも…
観ていてカタルシスはあるんだけどドラマ的な要素は薄くて、当然ながら観終わったあとに『心に残るようなもの』は殆どありませんが、まあそういう方向を狙って作った作品でも無さそうですし問題ないかなぁ?
総評としましては、無駄なイキオイとパワフルさが楽しい『なかなか良く出来たバイオレンスアクション系のサスペンス映画』って感じの一本ですかね。
普段から会社や上司に多少なりとも不満を抱いている人なら、良い感じにストレス発散になる内容だと思うので、そういう方向で興味がある人ならばなかなか楽しめる作品ではないかと…
まあ、そういう要素を抜いても『普通に良く出来た掘り出し物系のバイオレンスアクション作品』だと思うので、気になるならチェックしておいても損は無いと思いますよ。