■■■「悪魔の奴隷」■■■
(55点/オカルト)
1981年のインドネシア。
大学生のリニの母親が原因不明の病に倒れ寝たきりになってから3年。
かさむ母の治療費を払うために、彼女は大学を辞めて3人の弟たちや父と共に田舎町の祖母の家に身を寄せて、母の介護をしながら暮らしていた。
しかし介護の甲斐も無く母は他界してしまい、更には祖母も後を追うように亡くなってしまうが、その日から深夜に母が家族を呼ぶ時に使っていた『ベルの音』が聞こえたり、『母らしき人影』が現れたりと、不気味な現象が起こるようになっていく。
そんななか、祖母の遺品からある人物へと宛てられた手紙を発見した彼女は、母が生前に怪しげな宗教に関り、不気味な集団と交流があった事を知るが…
亡くなった母がかつて不気味な宗教に関わっていた事から、死後にその娘たちが恐るべき事件へと巻き込まれてしまうという、インドネシア製のオカルトホラー映画。
タイトルからして、いかにも『悪魔の〇〇』系のゴア系スラッシャーホラーっぽい邦題なので、インドネシア版のその手のゴア系作品なのかと思いきや、原題からして既に「SATAN'S SLAVE」みたいな感じのタイトルで、そのまんま『悪魔崇拝を題材としたオカルトホラー映画』でした。
お話としては、『長い闘病生活の末に介護されていた母が亡くなるんだけど、それ以降、夜な夜な母の霊らしきものが出現するという不気味な現象が起こるようになっていくが、その現象には実は母が生前の関わっていた謎の宗教団体が関連していると判明し…』みたいな感じの展開。
基本的には謎解き系のオカルトサスペンス映画なのですが、謎解きのプロットやら謎の宗教を描いた世界観やらが良く出来ており、『実際にそういう宗教があるんじゃないか?』と思わせるような妙なリアリティがあります。
この妙なリアリティのお陰で、お話に緊張感があってなかなか怖い感じに仕上がっているのは良いですね。
また単純に悪魔崇拝を題材としたオカルトという訳でも無く、幽霊と謎の宗教との関わりやらも一筋縄で行かない感じでストーリーに絡んできており、全体的にちょっと捻りが効いていて、サスペンスとしても最後まで先の展開が読めないような作りになっているのは面白いです。
終盤の怒涛の展開も無駄にイキオイがあって、オカルトとしてもなかなか楽しめる作りにはなっていると思います。
ただ、上記のように部分部分としては良いところも多いのですが、全体を通して観ると作りの荒い部分が目立つのは残念なところ。
設定や世界観に凝っているせいか、お話がゴチャゴチャしすぎな印象で全体的にちょっとテンポが悪く感じます。
また謎解きやらスリラーとしては面白いのですが、オカルト演出が弱めで『心霊的な怖さ』がちょっと薄いんですよね…
特に『不治の病の母親』はもうちょっと生理的な嫌悪感があったり、『母親の霊』はもうちょっと怖かったりしても良かったんじゃないかと思いました。
あとちょっと説明不足な部分が多くて、終盤の展開とかがいま一つ良く分からなかったのは自分だけですかね?
特にラストの『赤い種』と『収穫』の関連性とかが『なんのこっちゃ?』という感じだったので、この辺はもうちょっと説明があっても良かったんじゃないかと思いますよ…
総評としましては、不満点もあるもののそこそこ観れるレベルの『オカルトサスペンス映画』って感じの作品ですね。
粗削りな内容のため強く推すまでは至らないですが、『光るもの』や『見どころ』はそこそこあるので、アジア系の新鋭ホラーとして気になっているのであれば、チェックしてみても損は無い一本と言えるでしょう。
なんとなくスラッシャー映画っぽいタイトルですが、普通に宗教を題材としたオカルト作品ですので、そっち方面が好きな人で気になっているのであれば観てみても良いんじゃないでしょうか?