■■■「クズ・ゾンビ」■■■
(45点/モンスター)
アメリカ南部で飼料や緑化のために持ち込まれた日本の植物の『葛』は、その繁殖力の強さから驚異的なスピードで勢力を広げ、アメリカ全土に拡散しつつあった。
バイオ企業であるグローボ・バイオテク社は、葛を駆除するためにクアドキシンという新薬を開発。
そのテストをするために、アメリカ南部の片田舎の町であるチャールストンで新薬の散布を行う事となる。
しかし、その新薬は予定とは異なり葛の繁殖力を増して人間に寄生させ、その相手をゾンビに変えてしまうという恐るべき副作用がある事が判明し…
新型の除草剤の影響で突然変異した植物の『葛(くず)』が人間に寄生して人間をゾンビ化させてしまう…という、モンスターホラー映画。
タイトルを見て『ゾンビのクズってなんやねん?』と思いきや、別にクズなゾンビのお話ではなくて日本を代表する雑草である『葛(くず)』を題材としたゾンビ映画でした。
そういえば、アメリカ南部に持ち込まれた日本の『葛』が大繁殖して、侵略的外来種として問題になってて最近話題になってるという話をどこかで聞いた気がしますが…
『雷魚』が話題になれば『人食い雷魚』のホラー映画を、『葛』が話題になれば『クズゾンビ』のホラー映画を作るという、B級ホラーメーカーのフットワークの軽さには、相変わらず感心させられるものがありますね。
まあしかし肝心の映画の内容の方は、題材が目新しい事を除けば割とごく普通の低予算系ゾンビ映画という感じの作品です。
お話としては『大繁殖した葛を駆除するためにバイオ企業が「クアドキシン」という新薬を開発したら、その副作用で葛が突然変異して人間に寄生しゾンビ化させるようになってしまう』という感じの設定でお話がはじまり…
『田舎町の夏フェスにゾンビの群れが出現して大パニックになり、主人公たちは生き延びるために町からの脱出を目指す』みたいな感じの流れになるのですが、読んで分かるとおりに良くも悪くも非常にスタンダードなゾンビ映画的展開という感じの内容です。
残念なのは『葛が原因でゾンビ化する』という個性的な設定を採用している割には、本編でそれが活かされているような要素が殆ど見当たらないという事。
何カットか『蔦が皮膚の下をはい回る』みたいな描写はあるものの、それ以外だと申し訳程度にゾンビが葛の葉っぱを生やしているぐらいしか特徴がなくて、設定にあまり面白みが感じられません。
どうせなら、もうちょっと『植物由来のゾンビ』らしいネタを仕込んで欲しかったかなぁ?(ありきたりだけど蔦を伸ばして攻撃するとか…)
また映画の中身の方も、オーソドックスなサバイバルホラー的な展開ではあるのですが、低予算映画らしく映像とかアクションとか演出とかが非常にチープで、安っぽさばかりが目につきがちなのは残念なところ。
またゾンビの出現シーンが多めなのは良いのですが、逆に同じようなシーンばかりが続くせいで構成がメリハリに乏しくて全体的に盛り上がりに欠けるんですよね…
あまりにワンパターンなゾンビの襲撃シーンが繰り返されるので、ぶっちゃけ中盤辺りからちょっと眠くなってしまいましたよ。
なんか「クズ・ゾンビ」というタイトルと馬鹿馬鹿しい設定のインパクトの割には、ストーリーが中途半端にシリアス寄りでカタルシスの薄い内容だったのですが、個人的にはもうちょっとアホっぽい映画を期待してたので、どうにも物足りなさの残る作品でした。
あと細かいツッコミですが、ゾンビ化の原因になる「クアドキシン」って薬品が「バタリアン」の「トライオキシン」のパロディっぽいので、作中にもそういったオマージュでも込められているのかと思いきや、特に薬の名称以外はネタにもなってなかったのはちょっと残念なところでしたよ。
ただ、エンディングの「葛ロック」みたい歌は、ちょっとインパクトがあって笑えて良かったです。
総評としましては、そこまで酷い出来では無いものの『どうにも安っぽさとイマイチさが目につく低予算系ゾンビ映画』って感じの作品です。
割と普通すぎる内容なのであまりオススメできる部分もないですが、低予算ゾンビ映画としてはまあまあ観れるレベルには仕上がっている映画という印象ではありますね。
タイトルがイロモノっぽい割には中身は割とマジメな内容で、イロモノ系を期待してるとちょっと肩透かしを食らうかもしれないので、その辺は要注意といったところでしょう…