■■■「ジュラシック・ユニバース ダーク・キングダム」■■■
(35点/アクション)
近未来、大都市の地下に設立された秘密の研究所である『トライアシック(三畳紀)ワールド』では、遺伝子操作によって密かに復活させられた三畳紀最大の肉食恐竜である『ゴジラサウルス』が飼育されていた。
ゴジラサウルスはその遺伝子を人間の遺伝子と融合させる事で、人間に移植可能な臓器を培養する事を目的として育てられていたが、人間の遺伝子が加わった事によって高い知能を持つようになり、殺処分を行おうとしていた職員の隙をついて研究所内に脱走してしまう。
科学者のダイアナら研究所の職員たちは、なんとかしてゴジラサウルスを連れ戻そうと試みるが、研究所には恐竜が逃げ出した場合に防衛措置として『施設の全ての扉がロックされたうえで2時間後に研究所内の生物を抹殺するための毒ガスが噴射される』という事を知り…
三畳紀の肉食恐竜を密かに飼育する研究所で恐竜が脱走し、職員たちが恐竜に戦いを挑むという、生物パニックホラー映画。
少し前に「ジュラシック・ユニバース」って邦題で『VR世界で恐竜と戦う』という映画がありましたが、特にそれと関連がある訳でも無く、なんで関連作っぽいタイトルを付けたのはか意味不明ですが、原題は「TRIASSIC WORLD」(ジュラ紀ならぬ三畳紀ワールド)でASYLUMお得意の『有名作品便乗映画』ですね。
ちなみにワールドなんてタイトルが付いてる割には、作中で登場するのは『たいして広くも無い地下施設』で、タイトルからして何が『ワールド』やねんという感じ…
加えてタイトル以外にも色々とツッコミどころの多い作品です。
何がツッコミどころって、やはり最大のツッコミどころは『恐竜を復活させる』という世紀的な偉業を達成しておきながら、何故かそれを世間に公表せずに『人間の遺伝子と融合させて人間に移植可能な臓器を作る実験をしてる』という謎の設定。
作中で『臓器移植の研究を継続するためのスポンサーを探している』みたいな話が出てくるのですが、その『恐竜を復活させた事』自体をビジネスにすればいくらでもスポンサーが付いて大儲けできるだろ…って感じで意味不明すぎます。
そもそもいくら人間の遺伝子を融合させたからといって、恐竜の臓器が人間に移植できるって設定が無理がありすぎで、作中では『免疫的に人間に適合した』みたいな設定が語られてましたが、『よしんば免疫が適合したとしても、3m以上の体長のある恐竜の臓器なんかどうやって移植するんだ』っていうね…
他にも色々とツッコミどころが満載な作品なのですが、ツッコミどころを全て許容したとしても、とにかく『欲張って色々と盛り込み過ぎ』な印象。
恐竜の脱走だけでも一大イベントなのに、恐竜に噛まれた人間が毒のせいで錯乱して指令室に立てこもったり、恐竜の遺伝子操作に陰謀論が隠されていたり、恐竜が人間の遺伝子の影響で高い知能を持つようになってたり、矢鱈と付加的な設定が盛り込まれています。
その辺の設定がゴチャゴチャしすぎているせいで、お話が矢鱈と煩雑でまとまりが無くなっており、観ていてもストーリーが全く頭に入って来ないのは困りもの。
シーンごとの繋がりも全体的にブツ切り感が強くて、ダラダラした感じでどうにも退屈です。
ちなみに恐竜はCG+着ぐるみっぽい感じで作られているのですが、低予算さを感じさせられるチャチさはあるものの、まあまあ頑張っている印象。
着ぐるみの出来がそこそこ良くて、着ぐるみ併用のおかげて低予算映画ながらも人間との絡みも割とキチンと撮れているのは良い感じなので、もうちょっと人間との積極的な絡みがあっても良かったかも?
また前述のとおり、ゴチャゴチャと設定を盛り込みすぎているせいで、全体的に恐竜の影が薄くなってしまっている感があり、山場として描きたい見せ場も良く分からなくなってしまっている感じがあるので、もうちょっと設定を絞り込んで素直に普通の恐竜パニック映画にした方が良かったんじゃないかなぁ…
総評としましては、微妙な出来の『低予算恐竜パニック映画』って感じの作品ですね。
ただ『ツッコミどころ』という点に関してはビックリするぐらい満載な作品なので、ツッコミ目的のネタ映画として観るならばまあまあアリな一本かも?
また三畳紀の『ゴジラサウルス』(ゴジラから名前を取られた三畳紀最大の肉食恐竜)を扱った珍しい作品ではありますが、あんまりその設定が活かされてる訳でも無いので、そういう部分には期待しない方が良いかなぁ?