■■■「アンセイン ~狂気の真実~」■■■
(60点/サスペンス)
ストーカーのデヴィッドという男につきまとわれたことから、引っ越して新しい生活をはじめたソーヤーは、いまだにそのトラウマから完全には立ち直れずに、精神病院でカウンセリングを受ける事となる。
しかしカウンセリングを受けた彼女は、特に異常な行動が見られた訳でも無いのに、何故か唐突に軟禁するような形で強制入院させられる事となってしまう。
彼女は警察に助けを求めたものの精神病患者の妄言と思われて取り合って貰えず困惑していたところ、入院患者のネイトという男性から、この病院が実は『保険金詐欺のためにカウンセリングに訪れた健常者を強制入院させる悪徳病院だ』という奇妙な噂を聞かされる。
更には彼女の前に、接近禁止命令を受けている筈のストーカーのデヴィッドが職員として姿を現し…
ストーカー被害のトラウマからカウンセリングを受けた女性が唐突に精神病院に軟禁され、更には脱出できない環境下でストーカーの男性にまで付きまとわれるという、サイコサスペンス映画。
「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督の作品という事ですが、メジャー作品の監督だけあって流石になかなか良く出来た感じのサスペンス映画となっています。
本作の特徴として『全編がiPhoneのカメラのみで撮影されている』というのがあるようですが…
確かに『iPhoneでもこれだけの映像が撮れるんだ』と驚かされる部分はあるものの、それ以外は『画角がちょっと狭いな』とか『カメラがパンする時がぎこちないな』とか『ちょっと画面が暗くてハイライトが変だな』とかって程度と感じる程度で、特に映像に面白味がある訳でもありません。
企画ネタ的なものなのかもしれませんが、ぶっちゃけiPhoneのカメラを使った事によるメリットらしきものが1ミリも感じられないので、なんのためにこんな撮影手法を取ったのかちょっと謎ですよ。
まあでもiPhone撮影という部分を気にしなければ、サスペンスとしては普通に良く出来た作品といった印象。
お話としては『とある女性がストーカー被害のトラウマからカウンセリングに行ったらそのまま軟禁されて入院させられ、更にはその病院にストーカーの男までやってくる』という感じの展開。
精神病院に軟禁された上に、警察に相談しても精神異常者のたわ言としか聞いて貰えず、ストーカーの男まで何故かやってきてちょっかいをかけてくるという、なんとも四面楚歌な感じの状況設定がなかなか面白いですね。
主人公の混乱具合やら、あまりに異常なレベルの主人公に不都合な展開の連発から、『果たしてこれは現実なのか、主人公の妄想なのか?』といった感じの、先の読めない展開で楽しませてくれます。
ネタバレになってしまうので内容に関してはあまり触れませんが、主人公が精神的・物理的ともにどんどん追い詰められていく状況はなかなか怖いですし、後半のこの『異常事態』の謎が徐々にスッキリする形で解明していく展開も良く出来ています。
特に終盤の、主人公が追い詰められた状態からの予想外の逆転劇的な展開も、全く先が読めない感じの内容で面白かったです。
ただ惜しむらくは、全体的に山場になる部分が薄くてちょっと緊張感に乏しい感じなのと、オチがちょっと弱くてサスペンス映画としてはパンチが弱いということかなぁ?
またDVDパッケージとして観るぶんには、『iPhoneでの撮影』が完全にマイナス要素としてしか働いていないって部分は、やはり気になったところかも?
(結局、どういう理由でiPhoneで映画を撮影する事になったんだろう、もともとiPhone配信用に撮られた企画とかなのかな?)
総評としましては、作品の企画の方向性そのものにツッコミどころはあるものの、それさえ気にしなければ『まあまあ良く出来た感じのサイコサスペンス映画』って感じですね。
不条理系のサイコサスペンスとかが好きならば、普通に楽しめるレベルの作品だと思いますので、そういうジャンルが好きであれば観ておいて損は無いと一本ではないかと…
やや一発ネタ感はありますが、「オーシャンズ」シリーズの監督だけあって完成度の高い作品なので、サイコスリラー好きならばまあまあオススメできる映画ではないでしょうか。