■■■「シャットダウン」■■■
(55点/サスペンス)
彫刻家であるズザナは、IT企業に勤めるシステム開発者である夫が開発した極秘プロジェクトの一環として、最先端の管理システムとセキュリティを搭載し、AIで制御されたハイテクハウスでテストモデルとして1年間暮らすこととなる。
便利で気の利くAIの行動に最初は快適さを感じていた彼女だったが、モニタリングのために常時AIに監視されているような状態であることや、AIが徐々に彼女の意思に反した奇妙な行動を取るようになってきた事やから、不気味なものを感じるようになっていく。
また近所のアプリ開発者から、スマホのアプリを乗っ取るジョークプログラムを見せられた彼女は、何者かが彼女を陥れるために自宅のシステムをハッキングしているのではないかと疑心暗鬼に陥っていくが…
最先端のAIが完全管理されたハイテクハウスに暮らす女性が、AIシステムの予想外の行動によって恐怖に陥っていくという、サスペンススリラー映画。
チェコ/スロバキア製の『AIで管理されたハイテクハウス』を題材としたサスペンススリラー映画なのですが、さりげなく最近話題となっているスマートスピーカーなんかによるプライバシー侵害やら、ハッキングによる危険性やらのネタを取り入れた、なかなか時流に乗った感じの面白い作品だと思います。
お話としては『AI制御によるハイテクハウスで暮らすことになった女性が、繰り返されるAIの奇妙な行動や常時監視されているかのようなストレスから疑心暗鬼に陥っていく』というような感じの展開。
『彼女を監視し陥れようとしているのは誰なのか』というのがお話の中心として物語が進んでいく訳ですが、謎の提示の仕方やら不気味な現象による不安の演出といった部分は、コテコテな展開ながらも割と良く出来ています。
中盤辺りまでのミスリード的な展開は、悪くはない出来なもののあまりにもベタな感じでちょっと先が読めてしまうのが難点ですが、終盤の展開はなかなか先が読めない感じなのに加えて、非常にスピード感もあって盛り上がるのは良い感じですね。
ラストもちょっと捻りが効いていて、なかなか悪くないです。
難を挙げるならば、中盤あたりの展開がコテコテすぎるうえに盛り上がるような事件やらシーンも無いため、やや退屈に感じる部分がある事。
終盤もアッサリしすぎで物足りなさを感じる部分があったので、もう一カ所ぐらい山場となる部分があっても良かったんじゃないかなぁ?
また、本作の『もう一人の主人公』と言えるAIに関しても、もうちょっと個性を出すか、無個性なら無個性で『個性の感じられない不気味さ』みたいなものがあればなお良かったと思いましたよ…
総評としましては、小粒ながらも割と良くまとまった『ハイテク系サスペンススリラー映画』って感じの作品です。
強く推すほどではないですが、普通に楽しめるレベルの作品だとは思いますので、『AIによるプライバシーの侵害』とか『スマートスピーカーのセキュリティ問題』とかそういう事象に興味があるならば、ネタとして観ておいても損はない一本かも?
ただ『特に期待せずにネット配信とかで観れば、思った以上に楽しめる』ようなレベルではあると思いますので、急がないのであればそういう配信を待っても良いかもしれませんよ。