■■■「108時間」■■■
(60点/サスペンス)
人間は96時間を超える不眠を続けると、幻覚を見るようになりやがて精神に異常をきたすという。
1980年台にこれを超えるある種の実験が行われた。
1984年。
新人女優のビアンカは、斬新な演出の手法で知られる演出家のアルマの作り上げた独創的な劇で主役を演じる事となる。
それは実際に事件のあった廃精神病院を舞台として、108時間眠り続けない事によって精神に異常をきたした女性の悲劇を描いたものだった。
アルマは狂気を演じる演出の一環として、主役の座をかけて競い合うビアンカとそのライバルのセシリアに実際に寝ないで演技を続けることを要求。
怪訝に思いながらも、ライバルに負けたくない一心で演技を続けるビアンカだったが、建物で起こる奇妙な現象や不眠による疲労から徐々に現実と幻覚の境界があいまいになっていき…
108時間、眠らなかった事によって悲劇を向かえた女性を題材とした舞台劇に挑んだ女性が、自らも恐るべき恐怖を味わう事になる…というオカルト風味のサイコサスペンス映画。
タイトルだけ聞くとなんかクライムサスペンス映画っぽい感じですが、本作は『108時間寝ないとどうなるか』という不眠実験を題材としたサイコスリラーっぽい内容の作品ですね。
お話としては『斬新な演出手法で知られる演出家の演出する『不眠によって悲劇を迎えた女性』を主人公とした舞台に新人の女優が挑むことになるんだけど、演出家は演出のために女優に実際に108時間眠らずに演技を続ける事を強要…更に演技を続けて行くうちにお話のモデルとなった事件の女性に関する驚くべき秘密が判明していき』といった感じのストーリー。
実際に『不眠によって精神に異常をきたした女性』を演じるために、女優にも同じように不眠を強要するとか、色々とヤバすぎるだろ…
とか思う訳ですが、主人公が『ライバルに勝つために無理をして演技を続ける』みたいな設定になってて、その辺の不自然さを感じさせないような作りになっているのは、なかなか上手いですね。
また、単なる『オカルト現象と幻覚から狂気に陥っていく』みたいなステレオタイプのサイコスリラーかと思いきや、実は過去の事件に色々な秘密があったり、仕掛け人である演出家やライバルも一癖あるような存在だったりと、思った以上に凝った作りになっているのは面白いです。
特にお話が動き始める中盤あたりからは、この『凝った設定』のお陰で全く先の読めない感じの展開になっていき、予想以上に楽しませてくれます。
ただ凝ったストーリー展開は面白いのですが、オカルト要素に関してもサイコスリラー要素に関しても、肝心の『怖さ』がイマイチ感じられないのは困ったところ。
主人公も108時間の『不眠の限界』を向かえても、そこまで精神的に追い詰められているような雰囲気もなくて『なんならあと2日ぐらいは寝なくても平気なんじゃない?』みたいな感じで、妙に余裕がありそうに見えるのもちょっと違和感。
終盤の展開は色々とどんでん返し的な要素が含まれていて、なかなか捻りの効いたストーリーになっているのですが、ラストは妙に詰め込みすぎで矢鱈とゴチャゴチャした印象になってしまっているのは残念なところかなぁ?
捻った展開にするにしても、あそこまでゴチャゴチャしたややこしい設定にしなくても良かったと思いますよ…
総評としましては、凡庸な設定のオカルト映画かと見せかけて『意外と練って作られたサイコサスペンス映画』って感じの作品です。
強く推すまでは行かないものの、期待していなかった割には予想以上に楽しめた内容ではありました。
なかなか捻りも効いててそこそこ良く出来たサスペンス映画だと思いますので、設定やらが気になるようであればチェックしてみても良い感じの一本かもしれませんよ。