■■■「キューブ:ホワイト」■■■
(45点/サスペンス)
近未来の英国。
政府は独裁国家と化し、政府へと反抗する過激な革命軍である『英国解放軍』とイギリス政府の率いる正規軍との闘いによって、混迷を極めていた。
そんなある日、とある企業の総務担当であるルースは、頭に傷を負った状態で真っ白な立方体状の部屋のなかで目を覚ます。
謎の男性の声により様々な質問をされるも、記憶がもうろうとしており彼女が答えられないでいると、部屋が唐突に超高温になったり超低温になったり、床に電撃が流れたりといった、様々なトラップによる拷問が行われ、なぜ彼女はこの場所に居るのかに対する問いが繰り返されるが…
『白い立方体状の部屋』に捕らえられて、謎の声の人物によって死の罠による拷問を受ける女性のたどる運命を描いた、サスペンススリラー映画。
タイトルやら設定からして、なんとなく「キューブ」のフォロワー的なシチュエーションスリラー作品かと思いきや、実際には全く異なるノリのお話でした。
冒頭からいきなり、近未来社会における『政府軍と反政府軍の戦い』みたいな設定が語られるのですが、わざわざそんな設定が語られる事から想像できるとおり、当然ながら主人公はそういった勢力(もしくは反対勢力)の関係者という設定。
謎めいたシチュエーションスリラーっぽい展開なのは序盤のみで、中盤からは『なぜ彼女がこの部屋に入る事になったのか』という過去のエピソードが語られる事になっていきます。
ネタバレになるのであまり詳しくは書きませんが、ノリとしては『恐るべき政府の人体実験とその陰謀』とか『政府軍と革命軍の戦い』をみたいなのを描いた、政治サスペンス的なお話といった感じの展開です。
まあ、そちらの謎解きエピソードの方も『白い立方体状の部屋』を中心にお話が進んでいくのでシチュエーションスリラーではあるのですが、「キューブ」や「ソウ」のような理不尽系スリラー映画を期待してると、肩透かしを喰らっちゃうかも?
ストレートとしては、政府の非人道的な謎の研究が明らかになっていったり、主人公の過去に意外な秘密があったりといった感じで、管理社会的の恐怖とか、人間のエゴとかが中心に描かれていくという感じ。
未来の『管理社会』を背景として、その世界観を小さな白い小部屋を中心に描いていくという構成は個性的で割と面白いのですが、お話の展開が全体的に遅めなうえに山場となるようなシーンもあまり多くないので、どうにも冗長な印象を受けてしまいます。
また、キャラクターの描き込みはシッカリとしているのですが、主人公たちの心理の流れがやや分かり辛く、ちょっと盛り上がりに欠けるんですよね。
独特の世界観やシチュエーションを取り入れているのは良いのですが、逆にそれが足かせとなって説明不足感が出てしまっており、やや分かりにくい話になってしまっている印象を受けてしまいましたよ。
お話自体は悪くないのですが、政治的なネタを扱った割には何が描きたかったのか主題がハッキリせずに、ちょっとモヤっとしてしまうんですよね…
緊張感を出すために、もうちょっと主人公やヒロインたちが精神的に追い詰められるような描写が強めでも良かった気がしますよ。
総評としましては、いまひとつパッとしなくて『あまり印象に残らない感じの低予算シチュエーションスリラー映画』って感じですね。
世界観やら設定やら悪くない部分もあるのですが、そういった要素もそこまで活かしきれていない感じで、どうにも中途半端な印象を受ける作品でした。
気になるのであればチェックしてみても良いかもしれませんが、「キューブ」的な作品を期待していると全く方向性が違って肩透かしを喰らわされるかもしれませんので、そういうノリを期待しているなら要注意です。