
■■■「エレベーション 絶滅ライン」■■■
(55点/モンスター)
ある日、『リーパー』と呼ばれる謎の怪物が地底から大量に出現。
銃弾が効かず神出鬼没の怪物の襲撃によって、人類の95%が虐殺されるが、怪物が標高2500m以上の地域に立ち入らないと判明した事から、生き残った人々は高山地帯へと非難し各地て細々としたコミュニティを形成して生活を続けていた。
それから3年後。
怪物に妻を殺され、ロッキー山脈の避難所で幼い息子のハンターと暮らすウィルは、肺の病気を患う息子の治療薬が尽きた事から、下山して物資の補給に向かう事を余儀なくされる。
彼はリーパーを倒す研究を続けている元科学者のニーナ、友人のケイティと共に、2500mラインを越えた山のふもとにある病院を目指す事となるが…
『標高2500m以上の地域には侵入しない』という奇妙な特徴を持つ正体不明の怪物によって絶滅の危機に瀕した人類が、生き残りをかけて闘いを続ける…という、モンスターパニック映画。
「クワイエットプレイス」のヒット以降にちょっとだけ流行っている、『突如現れた謎の怪物の群れによって滅亡の危機に瀕した人類が、怪物の存在によって作られた「新しいルール」に支配された世界でなんとか生き延びようと戦いを続ける』という、「クワイエットプレイス」のフォロワー(というかパクリ)的な作品ですね。
ただ「クワイエットプレイス」は、『音をたてたら即死』という設定がお話のプロットや世界観として上手く機能しており、その設定が作中に漂う『緊張感』を高める事に成功していたのがヒットの由来だと思うのですが、本作は『標高2500m』以上という直感的にピンと来ない設定のせいもあって、作品の個性としてあまり上手く機能していないように感じるのは気になるところ。
また、この手の設定の作品って『この怪物になら人類が滅ぼされても仕方ないかな?』って説得力があるかによってリアリティの有無が決まって来るみたいなところがあると思うのですが、本作の怪物は『銃弾が効かないうえに地下から神出鬼没で出現する』という意味では「クワイエットプレイス」の怪物よりは厄介そうで、『そこそこ説得力はあるかな?』という印象ではあります。(それでも、一瞬で人類の大半を壊滅させるほど恐ろしい怪物かと言われると疑問ですけど…)
お話としては『息子を救うための医療物資を手に入れるために怪物のはびこる低地に向かう事になった父が、怪物の退治方法を研究する科学者や友人とともに怪物の襲撃から逃げながらふもとの病院に向かう』という感じのストーリー。
登場人物はほぼ3人のみで、それぞれの思惑や人間ドラマ的なものが描かれながらお話が進んでいくのですが、主人公と科学者のキャラの掘り下げはそこそこ悪くないものの、3人目の『死んだ妻を忘れられない主人公に横恋慕する友人』みたいなキャラが、物凄く影が薄いうえにストーリー的にもどうでもいい扱いすぎて、『何がしたかったんだよ』みたいな状態なのは、3人しか登場人物の居ないドラマとしていかがなものかと…(笑)
怪物に関しても序盤は結構『出し惜しみ』が酷くて、なかなか姿を見せない事にモヤモヤさせられますが、登場後はそこそこ出番も多くて、またトカゲと甲虫を合わせたようなシャープな外観の怪物のデザインは悪くはありません。
メインの登場人物に『怪物の退治方法を研究する科学者』が登場する事から、ある程度はお話の着地点が分かりやすいのは良いのですが、怪物の出し惜しみのせいもあってお話の展開が遅めで、全体的に冗長な印象があるんですよね。
また、中盤までのテンポのあまり良くない展開に対して、終盤の展開はやや唐突でアッサリしすぎなのも気になったところかなぁ?
怪物のデザインとかラストのオチとかは結構悪くないですし、もうちょっと『モンスター映画らしさ』がシッカリと描かれて居れば、そこそこ良い感じになったんじゃないかと思うので、ちょっと残念さを感じる作品でしたよ…
総評としましては、全体的に『いま一つ物足りなさを感じるモンスターパニック映画』って感じですね。
悪くない要素もあるんだけど、「クワイエットプレイス」のフォロワーとしては個性が薄くて印象が薄い作品になってしまっているので、なにかもう少し本作ならではの要素が欲しかったところですよ…
強く推すかと言われると悩ましいですが、悪い出来では無いので「クワイエットプレイス」系の『謎のモンスターの襲撃によるポストアポカリプス』的な設定の作品が好きであれば、とりあえずチェックしておいても良い感じの一本かもしれませんよ。