NIGHT_SHIFT (B級映画&ゲーム雑感 上井某BLOG)

上井某(家主)が観た「B級映画」(主にホラーとサスペンス)の感想と、たまにゲームとかアニメとかについてつらつらと語るブログです。

映画感想:「ライディング・ザ・ブレット」(60点/サイコホラー:結構オススメ)

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■■■「ライディング・ザ・ブレット」■■■
(60点/サイコホラー:結構オススメ)

 ベトナム戦争の影響で国自体が疲弊し、若者の間に将来への不安の影を落としていた1969年の10月。
 メイン大学へ通う皮肉屋な性格の学生のアランは、人生に嫌気がさして浴室で自殺未遂を働く。
 病院へ運ばれて一命を取りとめた彼だったが、退院してきてスグに彼の元へ彼の母親が脳卒中で倒れて病院へと運ばれたとの知らせを受ける。

 母子家庭で育ったアランは母親の事を心配し、大急ぎでヒッチハイクを繰り返しながら深夜の街を病院へと向かうが、彼はその道中で悪夢とも現実とも付かない恐るべき体験をする事となるのだった…


 ホラーの巨匠であるスティーブン・キング原作で、Web小説として販売されたという短編小説の映画化作品。

 この作品は原作を読んだことが無いので、オカルト風のホラーなのかな?と思って観ていたのですが、その実は…といった感じのお話なのですが…

 最初は、物語の序盤の展開が非常に難解で、主人公の悪夢とも妄想とも超常現象とも見分けの付かないようなシーンが頻繁に繰り返して描写されるため、意味が分からずに面食らってしまいましたが…
 中盤以降に『こういう映画なんだ』という事を理解すると俄然面白くなってきます。

 S・キングの原作といえば、キャラクターの心理描写や人間的背景の掘り下げを上手く用いる事で、何の変哲も無いありきたりな設定でありながら『読ませる小説』として成り立たせる上手さが特徴的なのですが、映画化してしまうとその辺の描写が大幅にカットされてしまうために駄作となってしまう事が多いのですが…
 本作は元々が短編小説という事だけあって、そういった尺不足から来る不満点は上手く解消されており、ごく普通に楽しむ事が出来ました。

 本作もストーリー的に説明しちゃうと、脳卒中で倒れた母親に会うために一人の青年が深夜の街を奔走する話。』というただそれだけの話なんですが、人間描写を巧みに盛り込む事で、『それだけのお話』を十分に面白い作品たらしめている所が、いかにもキング節全開といった所。

 スタンド・バイ・ミー「IT」程の明確なテーマ性は無い物の、一人の青年の人生の岐路となった成長物語…みたいなテイストも持っており、観終わった後に怖さよりも一種の清涼感の残るような作品でした。

 総評としましては、S・キング原作映画はクソ…という法則には当てはまらずに、なかなかにキングらしい持ち味を上手く活かした作品と言えます。

 序盤の展開の難解さと若干のテンポの悪ささえ除けば非常に良く出来た作品で、小粒なタイトルながらも非常に面白い、ある意味でB級らしいB級映画と言えるような作品でした。

 また、ホラー映画といいながらも残酷描写も殆ど無いですし、ホラー苦手な人でも十分に楽しめる作品だと思いますので、氏のファンならずとも、スタンド・バイ・ミーとかグリーンマイルといった感じの、S・キングの人間ドラマ風のノリの作品に興味がある人は一見の価値有りですよ。