■■■「ガリシアの獣」■■■
(55点/ファンタジーサスペンス)
19世紀半ばのスペインのガリシア地方では、不可解な住民の失踪事件や惨殺事件が相次いでいた。
住民たちはこれを森に棲む狼の仕業だと考え大規模な狼狩りを行っていたが、警察の依頼によって死体の検死を行ったフィリップス教授は、『死因を狼の仕業に見せかけた人間の手による殺人である』との、恐るべき結論を下す。
その頃、森林地帯に住むバーバラは、森へ入ったまま行方をくらませた姉と姪子との心配をしていたが、時折訪れる行商人であるロマサンタという男性の不可解な行動に疑惑を抱くようになっていくのだった…
19世紀中頃にスペインで実際に起こった『アリャリスの狼男事件』をモチーフとした、ダークファンタジー風味のサイコサスペンスホラー。
タイトルからして、同じようなテーマを扱ったヒット作である「ジェヴォーダンの獣」のパクリ映画のような印象を受けますが、あちらがモンスターホラー風のテイストを持った映画だったのに対して、こちらは中世が舞台のサイコサスペンスといった感じのお話です。
ちなみに『ジェヴォーダンの獣事件』はオカルト学が好きな人の間ではあまりにも有名な狼男事件ですが、コッチのは『聞いた事があるような無いような?』といった感じの話ですね…
ストーリーの方も『怪物は実在するのか?』というよりも、『殺人鬼の正体は何者なのか…そして、その目的は?』といった感じの展開がメインとなって、あまりモンスターホラーといった感じではありません。
予告とかだけを観ると、いかにもモンスターホラーっぽい印象を受ける作品なので、そういうノリを期待してるとちょっと肩透かしを食らうかも?
ただし、『狼男映画』としてはさておきサスペンスとしては結構良質で、序盤~中盤にかけての謎の提示の仕方や、謎解きプロセスの盛り上げ方もなかなか面白いです。
また、ゴシック風の幻想的なシーンの美術のデザインも良く出来てますし、因習に囚われた闇の時代から文明時代への変遷のさなかにある欧州のテイストの見せ方も上手くて、単純にオカルト学的な史実を知る為の映画としても非常に興味深く見れる作品でしょう。
ただストーリーを盛り上げる為とは言え、何の予告も無く『ストーリーの時系列が前後入れ替わって描かれるシーン』が多くあり、無意味に難解になってしまっている部分が多いかな?と感じる所もありました。
正直言って、ここまで順序をゴチャゴチャにする必要は無かったのでは?
私は中盤までは、『ヒロイン』と『その姉と娘』と『謎の行商人』との人間関係がサッパリ理解できずに、素で途中で一回巻き戻して確認してしまいましたよ…
総評としましては、小粒なタイトルながらもファンタジーテイストのサスペンス映画としては、なかなかに良質な作品だと思います。
オカルト学やゴシック風ファンタジーといったノリが好きな人ならば、結構ハマれる作品だと思いますので、そういった系列の映画が嫌いでなければ観ておいても損は無い作品でしょう。
「ジェヴォーダンの獣」が荒唐無稽なファンタジーアクションだとしたら、コチラは正統なオカルト学ノンフィクションといったノリなので、系列は全く異なりますが、コチラはコチラでなかなかに楽しめる一本だと思いますよ。