■■■「アリス・クリードの失踪」■■■
(65点/サスペンス:結構オススメ)
大富豪の娘であるアリス・クリードは目出し帽を着た2人組の男に誘拐され、廃屋のような場所に閉じ込められる。
犯人の目的が身代金目当ての営利誘拐だと知った彼女は、なんとかしてその場所から脱出しようとするが、犯人の一人が自分のかつての恋人のダニーだという事に気づき…
誘拐された大富豪の娘と2人の犯人達をめぐる物語を描いた、クライムサスペンス映画。
なんでもミニシアター系の劇場で公開された作品らしいですが、全編を通して登場人物が『誘拐された女性』と『2人の犯人の男達』の3人のみという、ちょっと異色なタイプのいわゆるシチュエーションスリラー映画ですね。
まあシチュエーションスリラー系の作品では、登場人物が1人とか2人のみとかって作品も既にあるので、『登場人物が3人のみ』という設定にはそこまで意外性も無いのですが…
その手の作品は『奇抜なシチュエーション』で登場人物の少なさを補っているようなものが多いのに対して、本作はシチュエーション自体は普通の『誘拐監禁もの』という設定で3人のみでサスペンスとしてストーリーを成り立たせているのは、なかなか上手いですね。
お話そのものに関しては、ごく普通のクライムサスペンス映画という感じの内容なのですが、登場人物がこんな少ない設定なのにストーリーが次々と二転三転していくというのは面白いです。
舞台も登場人物も殆ど変化しないのにサスペンスとしてキチンと成立しており、先の展開が全く読めない作りでグイグイとお話をひっぱっていく構成は、純粋に脚本の組み立てが非常に上手いと感じました。
ただ良く出来ている脚本だけに、逆に一般的なシチュエーションスリラーでウリにされるような『奇抜さ』とかは別に無くて、悪く言えば平凡な内容。
「ソウ」とか「メメント」とかみたいな一発ネタ系の奇抜なノリを期待してると、むしろ普通すぎて肩透かしを食らってしまうかも?
また、お話のスケールも非常に小さくて『派手な展開とかは全く無いような作品』なので、ハリウッド系の映画を見慣れていると地味すぎて物足りなさを感じるかもしれません。
でもまあお話自体は面白くて、ラストの展開とかもそこまでの伏線が割とキチンと消化された腹に落ちる展開で、観終わった後に非常に得心が行った気分になれるのは個人的には良かったですね。(ラストで本作の『タイトルの意味』が分かるという構成は、なかなか捻りが効いてて上手いと思いました。)
この手のシチュエーションスリラー映画は最後が投げっぱなしになりがちな作品が多いので、そういう意味では満足度の高かった作品かも?
総評としましては、そこまでの意外性とかインパクトは無いですが『手堅くまとまった佳作のシチュエーションスリラー映画』だと思います。
小粒なサスペンス映画とかが好きであれば、ごく普通に楽しめるレベルの作品だとですので、その手のジャンルが好きな人ならば観ておいても損は無い一本だと言えるでしょう。
キャッチーな部分が無いので話題性には欠ける映画ではありますが、シチュエーションスリラーの良作を求めていて、気になっているのであれば『とりあえずチェックしておいても良いレベルの作品』だと思いますよ。