■■■「夜明けのゾンビ」■■■
(65点/モンスター:結構オススメ)
19世紀半ばのアメリカ。
南北戦争の戦場となったテネシー州で『死者が蘇ってゾンビと化す』という現象が発生しはじめる。
戦争は終結したものの、ゾンビという災厄は残った世界で、元兵士であるエドワード・ヤングは、2日の狩りから戻ると妻がゾンビ化しているという状況に遭遇する。
怪物と化した妻を撃ち殺してなんとか難を逃れた彼は、行方不明となった息子のアダムの姿を求めて彷徨うが、その先でゾンビと化した息子に遭遇。
苦渋の決断のもと息子を撃ち殺し全てを失った彼は自分の最後の仕事として、いつか息子を連れて行くと約束していた『エリスの滝』へと遺灰を撒くための旅に出る事を決意するが…
ゾンビが発生した南北戦争時代のアメリカで旅を続ける一人のガンマンの運命を描いた、西部劇風味のゾンビ映画。
最初に「夜明けのゾンビ」と聞いた時に『いったい何の映画だよ…』と思った訳ですが、いわゆる「夕陽のガンマン」とか「暁のガンマン」とか西部劇的なオマージュの込められたタイトルなんですな。
(あと「ドーン・オブ・ザ・デッド」のオマージュでもあるのかな?)
それにしてもタイトルだけ聞くと妙にロマンチックな印象を受けるので、『どうなんだ?』って感じのタイトルではありますが…
まあこんな妙なタイトルにも関わらず、映画の内容の方はなかなか良く出来た感じのゾンビ映画だったりします。
お話としては、『ゾンビに家族を殺されて生きる目的を失った一人のガンマンが、旅先での様々な人との出会いを経て人生観を変えていく』といった感じの、いわゆるロードムービー的な雰囲気を持った作品ですね。
単純にゾンビ映画として観ると、主人公がデフォルトで銃を装備してる上にゾンビがかなり弱めの設定なのであまり緊張感が無いのですが、ロードムービーとして観ると非常に良く出来ている映画といった印象。
登場人物は少ないものの、主人公や周りのキャラクターの非常にシッカリと描き込まれていますし、主人公が全てを失って絶望していく背景や、そこから様々な人々との出会いを経て希望を取り戻していくというプロセスが非常に丁寧に作りこまれており、主人公の心情の動きとかにキチンと感情移入できる作りになっているのは上手いです。
またゾンビ映画にありがちな投げっぱなしのオチになっておらず、キチンと『ちょっと良い話』風の終わらせ方になっているのも、なかなかに好印象。
低予算ゆえにアクションシーンとかの盛り上がりに欠ける部分はありますが、ゾンビを挟んでの銃撃戦とかクイックドローでの対決とか、それなりに見せ場を用意してるのは良いですね。
難点を言えば、主人公たちがガンマンとして普通に強いのに対して、モンスターとして登場するのは『クラッシックタイプの遅いゾンビ』なので、ゾンビが『ただの障害物』のような扱いになっている事かなぁ…
特撮も地味で残虐シーンなんかも殆ど無いですし、もうちょっとゾンビ達に存在感があっても良かったかも?
あと2時間弱とこの手の映画としては尺が長めなのですが、中盤の展開等でちょっと冗長で盛り上がりに欠ける部分もあったので、その辺をもうちょっとシェイプアップしてテンポ良く見られる作りならば更に良かったんじゃないかと思います。
総評としましては、低予算ながらも割と良くできた『佳作レベルのB級ゾンビ映画』といったところでしょうか?
純粋にゾンビ映画として見ると物足りない部分もありますが、ロードムービー風のホラー映画として見るならばなかなか楽しめる作品になっていると思いますので、そういうノリが好きな人であれば観ておいて損は無い一本でしょう。
このところゾンビ映画で当たりを引けずにこのジャンルに飢えてたので、予想以上に楽しめた作品でしたよ。