■■■「ゾンビ・ナイト」■■■
(60点/モンスター)
ある日、突然に全世界で次々と死者が蘇り人間を襲うようになるという事件が発生。
事件発生の際に娘のトレイシーと共に外出していたパトリックは、非常事態に備えてセーフハウスを作って食料を備蓄をしているという隣家のマデン家のを頼ろうとする。
しかし、マデン家の住人は自分の家族を守るためにドアを開けてくれようとせず彼らは途方に暮れる事となるが、欧州で『夜明けになると事態が終息した』というウワサを聞いた事から、なんとかして夜明けまで隠れてゾンビの群れをやり過ごそうとするが…
全世界に唐突に出現したゾンビの群れから身を守ろうとする2組の家族の運命を描いた、モンスターホラー映画。
いつも微妙なパクリ映画を連発する事で有名なASYLUMの製作によるオリジナル系のゾンビ映画ですが、今回は珍しく『良いASYLUM』の作品ですね。
ASYLUMは、いつもは箸にも棒にもかからないようなパクリ映画しか作らない事が多いのですがごくまれに意外と面白い作品を作ったりするので侮れません。
本作も非常にオーソドックスなタイプのゾンビ映画ながらも、なかなかに良くできた良作といった感じで、普通に楽しめるサバイバルホラーといった感じの印象。
お話としては、単に『2組の家族がゾンビの大群からひたすら逃げるだけ』って感じの内容でストーリーらしいストーリーは全くありません。
そもそも、なんで唐突にゾンビが大量発生したかの理由すら全く語られておらず、根本的な世界観やゾンビの設定も全く説明されないという非常に割り切った作りなのですが、『細かい説明を省いてひたすらゾンビの襲撃シーンだけを描く』というコンセプトは意外と悪く無いです。
(まあ確かにゾンビ映画の世界観とか、何の説明も無くても分かりますしね…)
なにしろ『ゾンビの襲撃シーンしか無い』だけあって、お話のテンポが非常に良くて全く退屈せずに観れるのは良い感じ。
特撮レベルはあまり高く無いもののゾンビ映画としては水準レベルといったところで、全編が夜間のシーンばかりなのでショボい部分もあまり気にならないですし、襲撃シーンを『ゾンビの物量』でごまかしてる感じの構成もなかなか上手い。
また、オーソドックスな構成の割にはホラー映画のお約束を無視した感じの展開が多くて、『この人はここじゃ死なないだろう』ってキャラが割とアッサリと死んだりして油断できないのはなかなか面白いです。
真面目な性格のパトリックさんに対して、割と身勝手なマデンさんという対照的な2組の一家を軸に描いた構成も良い感じ。
ただ、襲撃シーンが非常に多い割には『山場となるような場面』が殆ど無くて、終始淡々とした印象なのは物足りない部分ではありますね…
予告で『友人や家族が次々とゾンビ化していく』なんてのがウリのサバイバルホラーっぽい宣伝がされてた割にはその辺の掘り下げもそこまで深く無いですし、もうちょっと『印象に残るような要素』がシッカリと作りこまれてたら名作になったんじゃないかと思うので、その辺りは少し残念なところです。
(『温室の中でゾンビの大群に囲まれるシーン』とかはそこそこ良い感じだったんですけど、ちょっと盛り上がりとしては弱いんですよね…)
ラストの『投げっぱなしながらも印象的な終わり方』もなかなか悪く無いですし、『もう一歩なにか本作ならではの個性のようなものがあればなぁ…』と感じる、ちょっと勿体無い感じの作品でしたよ。
総評としましては、オーソドックスながらも『意外と良く出来た佳作レベルのB級ゾンビ映画』って感じの作品ですね。
強くプッシュするほどではないものの、ゾンビ映画が好きであればごく普通に楽しめるレベルの作品ではあると思いますので、その手のジャンルが好きであればチェックしておいても損は無いでしょう。
ASYLUMという事で警戒してましたが、良い意味で予想を裏切る感じの作品ではありましたよ…
このメーカーも、このぐらいのレベルの作品を安定供給してくれるなら良いメーカーになるんだけどなぁ。