■■■「ハンテッド 狩られる夜」■■■
(45点/サスペンス)
巨大製薬会社のフィンザーでSNSマーケティングを担当するアリスは、不倫相手との情事のあと愛人の車で深夜に帰路を急いでいた。
道中に給油のために人里離れた山中のガソリンスタンドへと寄ったところ、店員の姿がないうえにカウンターに血痕のようなものを発見。
不気味に感じて店から出ようとしたところ、唐突にどこからともなく狙撃されて腕を負傷したうえにスマホも破壊されてしまう。
更には彼女の様子を見に来た愛人のジョンも、謎のスナイパーの狙撃によって殺害され、深夜のガソリンスタンドでスナイパーに狙われるなか、連絡方法も無いままに孤立してしまう。
店内にトランシーバーを見つけた彼女は、トランシーバーの交信相手へと助けを求めようとするが、その相手こそが彼女の命を狙うスナイパーだと判明し…
深夜のガソリンスタンドに立ち寄った女性が正体不明のスナイパーによって執拗に命を狙われる…という、サスペンススリラー映画。
深夜のガソリンスタンドという閉鎖空間を舞台とした、いわゆる『ワンシチュエーション系のシチュエーションスリラー映画』ですね。
「ハイテンション」やら「マニアック」といった尖ったホラー作品で知られるアレクサンドル・アジャ製作という事でちょっと期待していたのですが、なんと言うか『割と普通のシチュエーションスリラー映画だな』という感じの作品でしたよ。
お話としては『深夜のガソリンスタンドに不倫相手と共に立ち寄った女性が、唐突に正体不明のスナイパーに命を狙われ、不倫相手を殺されたうえに外部との連絡も取れないままにガソリンスタンドに釘付けにされてしまう』みたいな感じの、ホントにそれだけのお話です。
他の作品でも「フォンブース」みたいに同じようなシチュエーションの作品が既に何本かあり、いまひとつ目新しさに欠ける内容ではありますが、緊張感の保たせ方やらはシッカリとしており、映画としては割と良く作られた作品という印象ですね。
ワンシチュエーションものではあるものの、途中から『店員』と自称する男性が現れて『実はこいつが真犯人か共犯者では?』みたいに疑いを抱くシーンがあったり、他の客が来店してスナイパーに命を狙われてみたりとか、要所要所に見せ場を準備しており、あまり退屈しない作りになっているのは良い感じ。
また、主人公がパニックに陥って感情的になったりアホな行動を取るタイプではなくて、火災報知器を鳴らして助けを予防としたり、店内の電気を消してスナイパーに狙われ難くしてみたり…と、シッカリと『生き残るために最適な手段』を模索して、試行錯誤しながら行動していくのは観ていて好感が持てます。
ただ色々と頑張ってはいるものの、やはり『ワンシチュエーションスリラー』の問題点が解決されている訳ではなく、基本は『犯人との会話劇』でお話が進んでいくので、場面やシチュエーションにあまり変化が無くて正直言ってちょっと退屈。
途中で『実は妻に裏切られた夫が真犯人では?』みたいに推理する余地はあるものの、この犯人の喋りが『矢鱈と理屈っぽいうえにグダグダとうるさい』ので、観ていてちょっとイライラさせられてしまうのは困りもの。
もうちょっと魅力を感じられるような犯人像だったり、せっかくアレクサンドル・アジャが製作に加わってるんだから、もうちょっとエグい表現やら見せ場があっても良かった気はしますよ…
あと、ここから先はネタバレになってしまうのですが…
終盤辺りまでお話が進むと、コレ、『犯人は社会の歪みとか不公平感といったものの暗喩みたいな感じの存在で、最後まで犯人や動機がハッキリ分からん奴や!!』というのがなんとなく予想できてしまい、ラストも実際にスッキリしないオチなので、観ていてちょっとモヤっとしてしまいました。
なんというか『月並みな感じのオチ』で物足りなさがあったので、この手のワンシチュエーションスリラーを作るなら、もうあとひと捻りかふた捻りぐらいは、個性的な要素が欲しかったところですよ…
総評としましては、『可も不可も無いレベルのワンシチュエーションスリラー映画』って感じですね。
全体的に観ると悪くはない出来ではあるのですが、見せ場が薄くて盛り上がりに欠けるのに加え、他にも似たようなシチュエーションの作品が既に割と存在するため、なんとなく『あまり印象に残らない映画』というのが正直なところ。
気になっているのであれば観るのを止める程では無いものの、敢えて推すような要素もあまり無いので『まあお好みで…』といった感じの一本だと思いますよ。